米製薬大手アッヴィは6月25日、アイルランド同業のアラガンを買収することで合意したと発表した。買収額は約630億ドル。主力の関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」の特許切れで収益低下が懸念される中、しわ取り薬「ボトックス」で知られるアラガンの製品を取り込むことで、さらなる成長を目指す。
買収は現金支払いと株式交換を組み合わせた形で実施される。アラガン株主は1株当たり120.3ドルとアッヴィの株式0.866株を受け取る。1株当たりの買い取り価格は188.24ドルで、アラガンの24日の終値に45%を上乗せした水準となる。2020年初めの買収手続き完了を見込む。
ヒュミラの2018年の売上高は約200億ドルで、アッヴィの売上高の60%以上を占める。しかし、欧州ですでにジェネリック薬(後発医薬品)が登場し、米国の特許も2023年に切れることから、アッヴィの株価は18年1月から3分の1以上も下落。ヒュミラに代わる収益源の確保が課題となっていた。
アッヴィは売上高が36億ドルに上るボトックスなど美容医療向け医薬品に強みを持ち、眼科治療薬なども手がけるアラガンに目をつけ、買収を決めた。ヒュミラの販売で得た資金で買収代金を賄う。
アッヴィはアラガン買収によって、世界175カ国に基盤を持つ売上高480億ドルの大型製薬会社となる。研究開発(R&D)やマーケティングなどコストも削減でき、年20億ドル以上を節減できると見込んでいる。
アラガンは米国企業だったが、15年に米後発薬大手アクタビスに買収され、法人税率が米国を大きく下回るアイルランドに本社が移転した。同社をめぐっては、米製薬大手ファイザーが15年11月に買収を発表。これに伴い、ファイザーが本社をアイルランドに移すことになったが、米政府が16年に「タックスインバージョン」(租税地変換)への規制を強化したことから、ファイザーが買収を取り下げた経緯がある。