経営上の理由で即時解雇は可能か

被用者が会社の資金を大量に横領するなど重大な問題を起こした場合、雇用主は即時解雇できる。民法典(BGB)626条1項に定める即時解雇の「重大な理由」に該当するためである。では、被用者側に問題がないにも関わらず、経営上の理由、つまり雇用主サイドの理由で解雇する場合も即時解雇は可能なのだろうか。この問題に絡む係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が6月に判決(訴訟番号:2

AZR

50/19)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は国際的な航空会社で財務業務を担当する被用者が同社を相手取って起こしたもの。原告の部署は2014年、他の都市へと移転したことから、同社は移転しない被用者に研修などを施したうえで、グループ内の他の部署に異動することを従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)と取り決めた。どこかの部署に空きポストが生まれた場合、そのポストに応募。当該部署が受け入れを承認すれば、異動が成立するというものだ。同社ではこれを「クリアリング手続き」を命名した。

原告社員に対しては14年9月5日から3年間のクリアリング手続きが行われた。原告はこの間、語学を含む研修を受けたうえで他の部署の空きポストに応募したものの、どの部署からも受け入れられなかったことから、同手続きの終了期限内に異動を実現できなかった。

被告はこれを受けて17年9月20日付の文書で即時解雇を通告した。即時解雇を選んだのは、解雇予告期間を設定した通常解雇が労使協定で禁止されていたためである。

原告は解雇を不当として提訴。最終審のBAGはこれを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、社内で引き続き雇用する可能性が全くない場合は経営上の理由であっても解雇は可能だとしながらも、雇用主は解雇を回避するために最大限の努力をしなければならないと指摘。社内の他の部署に空きポストが発生したら当該被用者が応募するという被告が行ったクリアリング手続きは最大限の努力とは言えないとの判断を示した。被告には組織再編や新らポストの設置なども検討する義務があったが、そうした措置を取らなかったことから努力が足りなかったと言い渡した。

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