米がエアバス補助金めぐりEUに報復関税、WTO承認で18日にも発動へ

世界貿易機関(WTO)は2日、EUによる欧州航空機大手エアバスへの補助金をめぐる通商紛争で、米国がEUに年間最大75億ドル相当の報復関税を課すことを承認した。これを受けて米通商代表部(USTR)は同日、EUに対する報復関税を今月18日にも発動すると発表した。WTOはEUから米国への報復関税についても仲裁手続きを進めており、EU・米間の貿易摩擦はさらに激化しそうだ。

WTOによると、米国は年間100億ドルを超える報復関税の承認を求めていた。最終的に7割程度に減額されたが、WTOの仲裁で決定した金額としては過去最高額。USTRのライトハイザー代表は「エアバスに対するEUの大規模な補助金は米国の航空宇宙産業と従事者に大きな損害を与えた」と非難。最大75億ドル相当のEUからの輸入品に報復関税を課すと表明した。具体的には民間航空機に10%、その他の工業品とワイン、チーズ、スコッチウイスキー、オリーブなどの農産品に25%を上乗せする。

これに対し、欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は2日付の声明で、「WTOの承認を得たとしても、米国が報復関税の発動に踏み切るのは短絡的で非生産的だ。EUも今後数カ月のうちにWTOから承認が得られる見通しで、米国が報復関税を発動するのであればEUも同じことをするしかなくなる。報復の応酬は双方の経済活動や市民生活に打撃を与え、世界貿易にも悪影響をもたらす」と警告した。

EUと米国はエアバスと米ボーイングに対する補助金の違法性をめぐり、2004年からWTOを舞台に争ってきた。WTO紛争処理小委員会(パネル)は両社に対する開発支援や優遇税制などが違法な補助金にあたるとの裁定を下し、双方に是正措置を命じた。しかし、EUと米国はともに相手がWTOの決定に従わず、引き続き補助金の支給を継続していると主張し、相互に再提訴。WTO上級委員会は18年5月、EUによるエアバスへの補助金継続は不当との最終判断を下したのに続き、今年3月には米国によるボーイングへの補助金継続も不当と認定し、約15年にわたる紛争は両者の痛み分けとなっている。

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