Thyssen:ティッセンクルップ、社長を実質解任

鉄鋼系複合企業の独ティッセンクルップは9月30日、ギド・ケルクホッフ社長が合意のうえで即時退任すると発表した。理由は明らかにしていない。報道によると、組織再編方針をめぐって投資会社セビアンなど大株主と対立していたことが背景にあり、実質的に解任された格好だ。同社では前社長と監査役会長が株主と対立して昨年7月に辞任しており、ケルクホッフ社長が退任することで、社長が2人続けて任期を全うできない異例の事態となった。同社は後任者を1年以内に決定する意向で、それまではマルティナ・メルツ監査役会長が社長職を最大1年間にわたって担う。

ティッセンは5月、同社と印タタ製鉄の欧州鉄鋼事業を合弁化する計画がEUの欧州委員会に承認されない見通しを受けて同計画を断念した。これに伴い同社を工業会社ティッセンクルップ・インダストリアルズと素材会社ティッセンクルップ・マテリアルズへと分割し、ともに上場株式会社とする計画を撤回。収益力が高いエレベーター部門の新規株式公開(IPO)ないし売却を実施し、財務基盤を強化する方針へ転換した。

エレベーター部門のIPO/売却を実施することではキルヒホッフ社長とセビアンなどの間に意見の違いはなかったが、エレベーター部門の過半数株を保持したい同社長と、同部門の株式をすべて売却して特別配当を支給するよう求めるセビアンなどの間で対立が発生。これが解任につながったもようだ。同社長は自動車部品とエンジニアリング部門の売却を求めるセビアンなどの要求にも応じず、溝が深まっていたという。

セビアンは経営に積極的に介入する株主として有名なスウェーデンの投資会社。ティッセン株15.08を保持する第2位株主で、前社長と前監査役会長に対しても激しい批判を展開していた。

ティッセンの社長が目まぐるしく変わることを市場は懸念しており、同社株は25日に2%以上、下落した。投資家は経営が麻痺状態に陥る恐れがあるとみている。

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