ブロードコムに「反競争的」契約条項の排除命令、調査終了前に異例の暫定措置

欧州委員会は16日、米半導体大手ブロードコムに対し、同社が主要顧客と結んでいるテレビのセットトップボックス(STB)やモデム向け半導体の販売契約から「反競争的な条項」を排除するよう命じたと発表した。EU競争法に基づく調査は進行中だが、放置すれば市場に深刻な影響が及ぶと判断し、結論を出す前に暫定措置を発動した。同措置は今後3年間または欧州委による調査終了まで有効で、ブロードコムは30日以内に命令に従わなければならない。

欧州委は6月、ブロードコムがSTBとモデム向け半導体市場における独占的地位を乱用し、他社を不当に締め出した疑いがあるとして、本格調査を開始すると同時に異議告知書を送付した。同委が特に問題視しているのは、ブロードコムがSTBやモデムの製造販売を手がける主要顧客6社との取引に際し、リベート支払いなどの見返りとして、他社製品は購入しないとする条項を契約書に盛り込んでいる点。通常の手続きでは競争法違法の疑いが濃厚となった段階で異議告知書を送り、対象企業に反論の機会を与えた上で最終判断し、制裁金の支払いや是正措置を命じるが、ブロードコムに対しては調査終了前に暫定的な処分を下した。

欧州委は今回の措置について、ブロードコムの商慣行を放置すれば同業他社が深刻な打撃を受け、STBやモデム向けの次世代高速無線LAN規格「Wi-Fi

6」に関連した今後の入札に悪影響が及ぶ恐れがあるためと説明している。ベスタエアー委員(競争政策担当)は「このままブロードコムの行為に介入しなければ市場に深刻な影響が及び、取り返しのつかない損害が生じるだろう」と述べた。

ブロードコムは「欧州委の命令が顧客の選択に大きな影響を与えることはないだろう」と反論。当面は問題とされた契約条項の削除に応じるものの、EU司法裁判所に提訴する方針を示している。

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