50年までの温効ガス「実質ゼロ」で合意、「グリーンディール」構想は採決見送り

EUは12日の首脳会議で、2050年までに域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標で合意した。ただし、二酸化炭素(CO2)を多く排出する化石燃料への依存度が高いポーランドは、現時点で目標を実行する約束はできないとして反対を表明。来年6月の首脳会議での合意を目指して協議を継続することで一致した。EUが率先して野心的な目標を掲げることで、気候変動への取り組みで主導権を握る狙いがある。

ミシェルEU大統領は首脳会議終了後の記者会見で「EUは温室効果ガス排出量の実質ゼロを実現する世界で最初の大陸になる」強調。再生可能エネルギーへの移行には巨額のインフラ投資が不可欠である点を踏まえ、ポーランドについては「検討の時間が必要だ」と理解を示したうえで、各国の状況に配慮して適切な支援を行う必要があると述べた。

一方、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「EUは気候変動への取り組みをチャンスに変える」と述べ、対策の強化が産業振興や雇用創出につながるとの考えを強調した。また、EUが世界のリーダーとして実質ゼロの目標を掲げることで、中国をはじめとする主要な排出国に取り組みの強化を促す意向を示した。

欧州委は首脳会議前日の11日、「欧州グリーンディール」と名付けた包括的な環境政策の概要を発表した。50年までの実質ゼロ目標のほか、30年の温室効果ガスの排出削減目標を従来の1990年比40%減から50~55%減に引き上げることや、地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定を順守しない国からの輸入品に対し、関税を上乗せする「国境炭素税」の導入などを柱とする内容。ミシェル大統領は同構想を最優先議題と位置付け、首脳会議で合意を取りつけたい考えだったが、ポーランドが実質ゼロ目標に反対を表明したため、今回は採決を見送った。

欧州グリーンディールに関する通達によると、欧州委は来年3月までに50年までの実質ゼロを実現するための「欧州気候法案」をまとめる。また、再生可能エネルギーへの移行を実現するためのインフラ整備などに、官民合わせて1,000億ユーロ規模の資金を調達する仕組みを整える。さらに化石燃料への依存度が特に高い地域への支援策として、少なくとも350億ユーロ規模の「公正な移行のための基金」を設立し、EU全体で脱炭素化を進める計画も打ち出した。

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