欧州議会と欧州連合(EU)加盟国は12月17日、気候変動など環境問題の解決に貢献する経済活動の分類枠組み(タクソノミー)に関する規則案の内容で合意した。投資の判断材料となる事業の持続可能性について、評価基準をEUレベルで統一し、サステナブル投資を促す一方、環境問題への取り組みを誇張して投資家をミスリードする「グリーン・ウォッシング」を排除するのが規則案の狙い。欧州議会と閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールが導入される。
EUでは欧州委員会が2018年3月に発表した「持続可能な成長のための金融(サステナブル・ファイナンス)に関する行動計画」に基づき、タクソノミーの確立と運用ルールの策定に向けて議論が続いていた。昨年12月には欧州議会とEU議長国フィンランドの間で、環境分野における持続可能な投資を環境性のレベルに応じて「グリーン」、「イネーブル(有効)」、「トランジション(移行)」の3つに分類するなどで合意したが、原子力や天然ガスに関連したプロジェクトの扱いをめぐり加盟国間で意見調整が難航していた。
欧州議会と加盟国は今回、経済活動の持続可能性を判断する際◇気候変動の緩和◇気候変動への適応◇水と海洋資源の持続可能な利用および保護◇廃棄物対策や再生資源の利用促進などを軸とする循環型経済への移行◇汚染対策◇生物多様性と生態系の保全・回復—-という6つの環境目標を評価基準とすることで合意した。持続可能な投資とみなされるためには少なくとも1つの目標達成に貢献し、かつ他の目標を著しく害するものでないことが条件となる。
合意文書によると、規則案は石炭や褐炭をはじめとする固体の化石燃料を除き、特定の技術や領域を持続可能な経済活動から除外していない。このため、ガス発電や原子力発電などの事業も環境分野に「著しく害を及ぼすことがない(do
not
significant
harm)」との原則を満たせば、温室効果ガス排出総量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に向けて必要な、過渡的(トランジション)あるいは有効(イネーブル)な経済活動としてサステナブル投資の対象となり得ることになる。
規則案には欧州委が定期的に評価基準の見直しを行う旨の規定が盛り込まれている。欧州委は2021年末までに初回の見直しを実施し、ある経済活動が他分野の持続可能性を著しく害するかどうかの判断基準を明確化する。