米国のトランプ大統領は21日、EUが同国との貿易交渉に応じなければ、欧州車に高関税を課す可能性を示唆した。米国は中国との貿易協議を巡り、今月15日に「第1段階」の合意文書に署名したばかり。今後は中国に次いで貿易赤字が大きいEUとの交渉を優先する方針を示しており、関税の引き上げをちらつかせて圧力を強めるものとみられる。
トランプ氏は24日までスイスで開かれていた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に合わせ、欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談した。トランプ氏「EUとの取引は誰もが実現したいと考えている」と述べ、貿易交渉を進めたい意向を表明。フォンデアライエン氏は「米国人と欧州人は良い友人同士であり、良好な関係を強固にしていく。われわれの間には話し合うべき課題があり、これから交渉することになるだろう」と応じた。
会談終了後、トランプ氏は記者団に対し「良い話し合いができた」と発言。EU側に貿易赤字の削減や、航空機補助金をめぐる対立の解消に向けた取り組みを求めたことを明らかにし、「EUとは取引できると考えているが、合意できなければ(欧州車に対する関税発動を)真剣に検討することになるだろう」と述べた。
EUと米国は2018年7月、自動車を除く工業製品の関税撤廃などを柱とする貿易協議の開始で合意した。しかし、農産品を交渉範囲に含めるかどうかを巡って対立し、交渉は停滞している。
一方、トランプ政権は18年5月、安全保障を理由に関税の引き上げや輸入制限を発動する権限を大統領に付与する「通商拡大法232条」に基づき、自動車や自動車部品に最大25%の追加関税を課す方向で検討を開始した。ただ、EUや日本との関係悪化により国内産業に悪影響が及ぶとの懸念が広がる中、19年5月には関税発動についての判断を最大180日延期すると発表。判断期限は11月14日だったが、トランプ氏はその後も態度を保留している。