欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は2日、新型コロナウイルスの感染拡大がユーロ圏経済を圧迫する状況に対応するため、「適切な措置」を講じる用意があるとする声明を発表した。12日に開かれる次回の定例政策理事会で、何らかの金融緩和を決めると目される。
ラガルド総裁は声明で、「コロナウイルス問題は急速に状況が変化しており、景気の見通しや金融市場の機能にリスクが生じる」とした上で、「潜在的リスクに対応するため、適切かつ的を絞った措置を必要に応じて講じる用意がある」とコメントした。
ユーロ圏経済は緩やかな回復が続いているものの、すでに減速傾向にある。2019年10~12月期の域内総生産(GDP)は前期比0.1%増となり、上げ幅は前期の0.3%から0.2ポイント縮小した。イタリアを中心とする新型コロナウイルスの感染急拡大が消費の停滞、サプライチェーンの混乱などを招き、景気がさらに悪化するのが避けられない情勢だ。
ラガルド総裁の発言は、こうした状況に応じたものだが、すでにECBはユーロ圏の国債などを買い入れる量的金融緩和を19年11月に再開しているほか、主要政策金利の中銀預入金利がマイナス0.5%となっており、追加緩和の余地は小さい。次回の政策理事会で預入金利のマイナス幅を拡大する可能性があるが、効果は限定的だ。このため、市場ではECBが「TLTRO」と呼ばれる長期資金供給オペ(金融機関が融資を増やすことを条件に長期資金を供給するオペ)を拡大し、新型コロナ感染問題で苦境に立つ中小企業への銀行の融資を増やすことや、国債買い入れの拡大といった他の措置も視野に入れているとの見方が出ている。
ユーロ圏各国、財政出動も
一方、ユーロ圏では各国の財務相が5日に電話会議を開き、新型コロナウイルスの感染拡大への対応について協議した。協議後に発表された声明によると、各国は感染拡大がサプライチェーンの混乱を招くなど、ユーロ圏経済に大きな打撃を与える恐れがあるため、協調して財政出動を含むあらゆる措置を講じることで一致。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のセンテノ議長(ポルトガル財務相)は記者団に対して「いかなる努力も惜しまない」と述べ、景気の下支えに向けて必要な措置を講じる決意を示した。
ユーロ圏財務相は3月中旬に再び会合を開き、状況を検証した上で、何らかの措置を決める見通しだ。