事業所委の事務所、メンバー全員にカギを渡す必要はあるか

従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)の全メンバーは事業所委の書類をいつでも閲覧する権利がある。これは事業所体制法(BetrVG)34条3項に記された権利である。では書類のある部屋にカギがある場合、全メンバーにカギを渡さなければならないのだろうか。この問題を巡る係争でヘッセン州労働裁判所が昨年9月に決定(16

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67/19)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は事業所委員会のメンバーが雇用主を相手取って起こしたもの。同委の事務所には複数の部屋があり、すべての書類は事務局の部屋で管理されている。事務局の業務時間は8時から16時までで、それ以外の時間は施錠された状態にある。同事務所の各部屋にはカギがあり、カギがないと入れないようになっている。

原告はこれを受けて、事業所委のすべての部屋のカギを同委の全メンバーに持たせることを雇用主に要求。これが拒否されたため、提訴した。

この裁判で二審のヘッセン州労裁は、事務局が8~16時以外の時間帯は施錠されており、カギを持たないメンバーは入室できない事情を指摘。事業所委の全メンバーが同委の全書類をいつでも閲覧できるようにするためには、事務局のカギを全員に与える必要があるとの判断を示した。

事業所委のすべての書類が電子文書の形式でも保存されていることを根拠に、事務局に入室しなくても書類を閲覧できるとしてカギの付与を拒否した被告雇用主の主張については、紙文書がある以上は、事業所委のメンバーには紙文書もすべて閲覧する権利があるとして、被告の主張を退けた。

事務局以外の部屋のカギについては、それらの部屋に事業所委の文書がないことから、裁判官は原告の訴えを退けた。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。

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