ティッセンクルップ―持株会社に転換、鉄鋼部門は合弁化も―

経営不振の独ティッセンクルップ(エッセン)は18日、組織再編計画を発表した。持株会社へと移行し各事業部門に独立採算の責任を持たせるとともに、競争力のない事業は売却。これまで稼ぎ頭だったエレベーター部門の売却後も持続的に成長できる体制を整える。鉄鋼と軍用船の2部門についてはグループ内にとどめるとしながらも、合弁化も視野に入れていることを明らかにした。マルティーナ・メルツ最高経営責任者(CEO)は「ティッセンクルップは小さくなるが、組織再編を通して強化される」と明言した。

同社は経営の重荷となっていた鉄鋼部門を印タタ製鉄の欧州事業と合併化することで財務から切り離す方針だったが、欧州連合(EU)の欧州委員会の反対でとん挫したことから、自力再建に切り替えた。収益力の高いエレベーター部門を米投資会社アドベントなどのコンソーシアムに172億ユーロで売却。売却益で有利子債務を圧縮するとともに、手元に残す事業を強化する。

ティッセンの下で今後も事業を展開する部門は材料取引、産業部品、自動車部品、鉄鋼、軍用船の5部門。自動車部品では車両の電動・IoT化という大きな流れを踏まえ、ピンポイントでアライアンスや開発パートナーシップを結ぶ。

鉄鋼と軍用船部門についてはすでに合弁化に向けた協議を行っていることを明らかにした。メディア報道によると、鉄鋼部門には中国とスウェーデンの鉄鋼大手のほか、タタ製鉄の欧州子会社が関心を示しているという。ティッセンは欧州鉄鋼業界が抱える過剰生産能力が新型コロナ危機で一段と膨らんでいることを踏まえ、業界再編に前向きな意向を表明した。

一方、経営の重荷となっているプラント建設、パワートレイン・ソリューションズ、ばね・スタビライザー、インフラ、厚板、電池ソリューションズ事業およびイタリアのステンレス鋼生産子会社アッチャイ・スペチャーリ・テルニ(AST)については新設する受け皿部門「マルチトラックス」へと移管し、売却ないし事業拠点の閉鎖を検討する。これら事業の売上高は計60億ユーロで、雇用規模は2万人を超える。

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