VW社長などの裁判打ち切り、ディーゼル排ガス不正の独刑事訴訟で

自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題に絡んだドイツの刑事訴訟で、被告となっていたヘルベルト・ディース社長とハンスディーター・ペッチュ監査役会長への裁判手続きが打ち切られたことが19日、明らかになった。経済誌『マネージャー・マガチィン』が報じ、同社が追認したもので、VWとブラウンシュヴァイク地方裁判所、ブラウンシュヴァイク検察当局の3者は、VWが計900万ユーロを支払うことを条件に両氏の公判を行わないことで合意した。マルティン・ヴィンターコルン元社長に対する裁判は打ち切りの対象となっていない。

VWは2007年に米国で導入された窒素酸化物(NOx)の厳しい排ガス基準を同社のディーゼル車が遵守できないことから、違法なソフトウエアをインストール。台上試験でのみ排ガス浄化機能が適切に働くようにした。

米当局は排ガス不正の容疑で2014年にVWの調査を開始。15年春には事実を確認するために同社に対し執拗な問い合わせを行った。

ブラウンシュヴァイク検察当局によると、VWはこれを受けて、不正の事実を公表すると巨額の損失が発生すると判断。株価に重要な影響をもたらす事実は速やかに公表しなければならないという適宜開示義務に違反し、公表を意図的に遅らせたという。

米環境保護庁(EPA)が15年9月18日にVWに対する「違反通知」を公表すると、同社株が急落したことは、開示による巨額損失をVWが事前に認識していたことを間接的に裏付けるものだというのが検察当局の見方で、ヴィンターコルン社長(当時)は遅くとも15年5月、ペッチュ財務担当取締役(同)は同6月29日、ディースVWブランド乗用車部門担当取締役(同)は同7月27日時点で、不正の事実とそれがもたらす財務上の痛手を把握していたと断定。違法な市場操作の容疑で19年9月に3人をブランシュヴァイク地方裁判所に起訴した。

これに対しVWは、米当局と協議し問題の解決策を取り決めたうえで、共同声明を発表する意向だったと主張。EPAが違反通知を公表する前の時点では排ガス不正の適宜開示に踏み切るに足る具体的な根拠がなかったとして、巨額損失を恐れて適宜開示義務に違反したとする検察の主張に反論していた。

検察の主張に対してはブラウンシュヴァイク地裁の裁判官も3月の時点で疑念を表明し、ディース、ペッチュ両氏に対する裁判手続きを金銭の支払いを条件に打ち切ることに前向きな姿勢を示していた。

マネージャー・マガチィン誌によると、ヴィンターコルン元社長に対する裁判も、場合によっては条件付きで打ち切られる可能性があるという。同元社長は市場操作容疑とは別に、詐欺などの容疑でも起訴されている。

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