フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正車を購入した消費者が購入費用の全額返済を求めて起こしていた裁判で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は25日、この訴えを部分的に認める判決を言い渡した。原告の車両使用により低下した価値を除いた額の支払いを被告VWに命じている。VWはこれを受け、排ガス不正問題の他の訴訟の原告との間でBGH判決に沿った内容で和解を目指す意向を表明した。
今回の裁判はVW「シャラン2.0TDI」の中古車を2014年に購入した消費者が起こしたもの。同モデルには「EA189」というディーゼルエンジンが搭載されていた。
同エンジンには違法なソフトウエアが搭載されており、台上試験と実際の路上走行の違いを認識し窒素酸化物(NOx)の浄化装置が台上試験でのみ働くようになっていた。この事実は15年9月に発覚した。
VWはこれを受け、欧州顧客が購入した車両のリコールを実施。EA189用ソフトの再インストールを行ったものの、欧州連合(EU)の排ガス基準「ユーロ5」を満たすことができなかったことから、原告は提訴し、購入費用3万1,490ユーロの全額返済を同社に要求した。
二審のコブレンツ高等裁判所は原告の部分勝利を言い渡した。購入価格から使用に伴う価値の低下分を除いた額(2万5,616.10ユーロ)で車両を買い戻すことをVWに命じている。
最高裁のBGHはこの判決を支持した。判決理由でBGHの裁判官は、VWは開発コストを削減して利益を増やすためにユーロ5の基準を満たしていない車両の型式認定を不正に取得したと指摘。この不正が発覚すれば当該車両は型式認定を取り消され使用できなくなる恐れがあったにもかかわらず、販売したことは「善良の風俗」に反する故意の不法行為に当たるとの判断を示した。
VWの排ガス不正車を購入した消費者は多く、ドイツでは現在、約6万件の損賠請求訴訟が行われている。今回の最高裁判決の結果、他の訴訟でもVWの敗訴は避けられない見通しとなったことから、同社はこれらの訴訟を和解で終了させる意向を表明した。
VWは2月、排ガス不正車を巡る集団代表訴訟で、独消費者センター全国連盟(vzbv)と和解した。同訴訟に参加した消費者およそ24万人に対し1,350~6,257ユーロを支払うことになっている。この和解を受け入れた消費者は車両を返還する必要がないものの、新たな損害賠償を請求することはできない。