欧州連合(EU)が7月1日から鉄鋼製品の緊急輸入制限(セーフガード)を緩和し、非関税の輸入枠を拡大した。同枠が消化されていないことが理由だが、セーフガード強化を要請していた欧州の鉄鋼業界は反発している。
EUは2018年、米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、セーフガードを発動した。米市場から締め出された鉄鋼製品が大量にEU市場に流入し、域内の鉄鋼メーカーに大きな損害を与えるのを防ぐのが狙い。26品目を対象に、輸入量が一定水準を超えれば25%の関税を課している。
欧州の鉄鋼メーカーの業界団体である欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は6月初め、新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要が減り、欧州の鉄鋼業界が厳しい状況に追い込まれているとして、7月から非関税の輸入枠を見直すことになっていた欧州委員会に同枠の削減を要請していた。
しかし、欧州委は6月30日付の官報で、5月中旬時点で過去1年間の非関税輸入枠の29%が消化されておらず、業界が懸念する大量流入は起きていないとして、削減を拒否。1日から同枠を3%拡大すると発表した。1年前の見直しと同水準の引き上げとなる。向こう1年間にわたって適用される。
EUROFERは欧州の鉄鋼需要が落ち込んでいることに言及した上で、「非関税輸入枠がさらに引き上げられたのは、まったく理解できない」と批判している。