欧州証券市場機構(ESMA)は18日、ヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE)ファンドなどを対象とする「オルタナティブ投資ファンド運用者指令(AIFM指令)」について、改正に向けて集中的に議論すべき19項目を欧州委員会に提言した。英国のEU離脱に伴う金融市場の変化に対応し、オルタナティブ投資ファンドに対する監督体制を強化する必要があると指摘している。
EUでは2007年12月から09年にかけて起きた世界金融危機で、流動性不安に陥ったヘッジファンドが急激な資産処分を行ったことが危機を増幅させたとの認識に立ち、EU域内で設立・販売される全ての投資ファンドを金融当局の監督下に置くため、11年にAIFM指令が導入された。同指令はヘッジファンドやPEファンドなどに対する規制の枠組みとして効果的に機能してきたが、12月末には英国のEU離脱後の移行期間が終了するため、いくつかの項目を見直す必要に迫られている。
ESMAのマイヨール長官は欧州委のドムブロフスキス副委員長(金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当に宛てた18日付の書簡で、AIFM指令とUCITS(パスポート制度によりEU全域で販売が認められている投資ファンド)規制の調和、オルタナティブ投資ファンド運用者の権限委託、流動性管理、報告書の開示義務など19項目の見直しを提案した。
このうち英国のEU離脱で最も顕著に直接的な影響が及ぶのは、オルタナティブ投資ファンド運用者の権限委託。AIFM指令はファンド運用者の権限の一部を外部に委託することを許容しており、例えばアイルランドやルクセンブルクでファンドを設立し、実際の運用はロンドンで行うといったスタイルが定着している。現行ルールのままEU離脱後の移行期間が終了すると、ファンドを運用する英国の事業者に対してESMAの監督権限が及ばなくなる可能性が生じ、オルタナティブファンドの運用上および監督上のリスクが増大して投資家保護が脅かされる可能性がある。このため、ESMAは外部委託を認めるための実体的要件を見直す必要があると指摘している。