ECBが金融緩和策を維持、成長見通しは上方修正

欧州中央銀行(ECB)は10日に開いた定例理事会で、新型コロナウイルス感染拡大による景気低迷を受けて実施している大規模な金融緩和策の維持を決めた。3月に利下げした中銀預金金利はマイナス0.5%で据え置き、新型コロナの危機対応で3月に新設した資産購入枠も6月に拡大した上限1兆3,500億ユーロのまま継続する。

ECBは同日公表した最新の内部経済予測で、2020年のユーロ圏成長率(通年)をマイナス8.0%とし、前回(6月)のマイナス8.7%から上方修正した。ただ、7月から8月にかけて経済対策として実施された各国政府による補助金が期限を迎えたり、企業の雇用調整などの影響が出始めており、景気回復の足取りは重い。一方、20年の消費者物価上昇率は6月時点と同じ0.3%のまま据え置いた。

ECBのラガルド総裁は政策理事会後の記者会見で、新型コロナを受けて各国が導入した移動制限の緩和により、「ユーロ圏経済は力強い回復を示した」と強調。一方、消費者物価指数については「今後数カ月は下落する」との見通しを示し、引き続き十分な金融政策が不可欠と指摘した。

ECBは6月の追加緩和でコロナ対策の資産購入枠を総額7,500億ユーロから1兆3500億ユーロに拡大した。金融市場は一定の落ち着きを取り戻し、景気は底を打ったとみられるが、物価上昇圧力が弱まっているうえに、急激なユーロ高が影を落とす。ラガルド総裁は会見でユーロの上昇は「物価に悪影響を及ぼす」と述べ、為替動向を注視する必要があると強調した。

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