2020/9/21

EU情報

英のEU離脱協定修正法案、月内に下院で可決へ

この記事の要約

英国のジョンソン首相は16日、EUと締結した「離脱協定」の一部の条項を英政府の判断で変更できるようにする国内法案について、与党・保守党内の反対派と修正で合意した。これによって同法案は月内に下院で可決される見込みだ。国際法 […]

英国のジョンソン首相は16日、EUと締結した「離脱協定」の一部の条項を英政府の判断で変更できるようにする国内法案について、与党・保守党内の反対派と修正で合意した。これによって同法案は月内に下院で可決される見込みだ。国際法違反として猛反発するEU側の撤回要求をはねつけたことで、EUが態度を硬化させ、自由貿易協定(FTA)交渉が暗礁に乗り上げる事態も予想される。

問題となっている国内法案は、離脱協定のうち英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境管理に関する部分を無効にするというもの。EUとのFTA交渉が決裂した場合、英本土から北アイルランドに入る物品の関税ルールを英国が決めるという内容だ。

離脱協定では英本土から北アイルランドに流入する物品についてはEUの関税ルールが適用されないものの、北アイルランド経由でアイルランドなどEUに輸出する目的で入ってきたものは適用対象となる。英政府はEUが不当な関税を課す場合などが国内法の対象となり、英政府の決定が優先されると説明している。

同法案をめぐっては、EUが国際法に違反するもので、英国とEUの信頼関係を損なうとして9月末までに撤回されなければ提訴も辞さない構えを示している。それでも英政府は14日に下院に法案を提出。下院は法案の基本方針の是非を判断し、詳細な審議に入るかどうかを決める手続きである第2読会の採決で、賛成340票、反対263票で承認した。

ただ、保守党内も同法案を国際法違反と批判する動きがあり、同採決では20人以上の議員が造反した。ジョンソン首相は今後の手続きで造反を抑えるため、反対派議員の主張を取り入れ、国内法に盛り込まれた措置を政府が講じる際に議会の承認を必要とするといった修正を加えることで合意。下院での可決が確実となった。

ジョンソン首相が離脱協定に反する動きに出たのは、EU側に揺さぶりをかけ、難航しているEUとのFTA交渉で譲歩を引き出す狙いもある。しかし、EUはあくまでも取り下げを要求しており、月末に非公式首脳会議を緊急開催し、同問題について協議する予定だ。

一方、FTA交渉は依然として停滞している。消息筋によると、英国側は8~10日の交渉で、公平な競争環境の確保とともに大きな争点となっている漁業権をめぐる問題で、英海域でのEUの漁船の漁獲量を段階的に引き下げるものの、操業は認めるという妥協案を提示したが、EU側は要求する内容とほど遠いとして受け入れなかった。新たに生じた国内法案問題が交渉に影響するのは必至で、決着するまで大きな進展は見込めそうにない。

一方、国内法案は下院を通過しても、上院で承認される必要がある。上院では保守党が過半数を割り込んでおり、審議が紛糾する可能性が高く、採決が11月までずれ込むとの見方がある。英フィナンシャル・タイムズによると、これはジョンソン首相にとって好都合で、同問題を棚上げしながらFTA交渉を継続し、EUと英国の両方がFTA交渉の合意期限としている10月中旬までの合意を目指すという戦略を描いているもようだ。ただ、双方の主張の隔たりは大きく、首相の揺さぶり戦略が不発に終わりかねない状況だ。