日英がEPAで大筋合意、農産品の新たな低関税枠設けず

日英両政府は11日、経済連携協定(EPA)の締結で大筋合意した。昨年2月に発効した日本とEUのEPAを概ね踏襲した内容で、幅広い品目の関税が撤廃される。10月に新協定の署名が行われる見通しで、双方の議会による承認を経て2021年1月1日の発効を目指す。

英国は今年1月にEUを離脱しており、12月末に移行期間が終了すると、日英間では日欧EPAに基づく関税の優遇措置が適用されなくなる。このため両国は6月に新たな貿易協定の締結交渉を開始し、日本製乗用車やブルーチーズをはじめとする英国産農産品の扱いなどをめぐって協議が行われていた。英国にとってはEU離脱後に主要国と締結する初の貿易協定となる。

茂木敏充外相と英国のトラス国際貿易相がテレビ会議方式で会談し、新協定の大筋合意を確認した。茂木氏は記者会見で「電子商取引などの分野でEUとのEPAより先進的なルールで合意することができ、日英間の貿易投資の促進につながると期待される。日欧EPAの下で日本が得ていた利益を継続し、英国に進出している日系企業のビジネスの継続性も確保することが可能となる」と強調。トラス氏は「日本との新協定は環太平洋経済連携協定(TPP)加盟に向けた重要な一歩になる」とコメントした。

日本にとって最大の焦点だった日本製乗用車に対する関税は、EPAに準じて26年に撤廃する。日欧では乗用車にかかる関税を段階的に引き下げ、EPA発効から8年目の26年に撤廃することが決まっているが、日本側は英国との交渉で関税撤廃までの期間を短縮し、日欧と同時期に撤廃するよう求めていた。自動車部品もEPAと同様、貿易額の9割超で関税を即時撤廃する。

農産品分野では、英国が求めるブルーチーズの関税優遇措置を巡り、最後まで調整が難航した。日欧EPAでは日本がEU産のソフトチーズなどに対して一定の輸入枠を設け、枠内の数量については段階的に関税を下げる一方、それ以外は従来の税率を維持している。日本側は日欧EPAで認めた品目以外に新たな低関税の輸入枠を設けない方針を堅持し、ブルーチーズを含むソフトチーズを対象に、日欧EPAに基づく低関税枠に余剰がある場合に限り、その範囲内で英国産にもEU産と同水準の税率を適用することで合意した。具体的な輸入手続きについては今後詰める。

一方、デジタル分野では、電子商取引に関連したデータのやり取りについて、原則として禁止または制限しないことや、関税を課さないことで合意した。また、人工知能(AI)などで活用するアルゴリズムやソースコードなどに関しては、政府が開示を求めることを禁止するルールを設けた。中国などを念頭に、国家が企業のデータを管理し、支配力を強める動きをけん制する狙いがある。

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