EU加盟国が復興基金で合意、補助金枠の削減で決着

欧州連合(EU)加盟国は21日の首脳会議で、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた域内経済の復興に向けた7,500億ユーロの基金の創設について合意した。最大の焦点となっていた基金の配分で、オランダなど「倹約4カ国」の要求を考慮し、返済が不要の補助金の枠を縮小し、融資部分を増やすことで折り合いがつき、5日間に及ぶ協議で決着にこぎ着けた。

復興基金は欧州委員会が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、新型コロナによる経済の打撃が大きい国に補助金と融資の形で配分するというもの。イタリアなど支援対象国は財政が不健全で、独自の国債発行による資金調達が難しいことから、欧州委がEUの高い信用力を生かして債券を発行し、7,500億ユーロを調達する。EUが全体として借金し、共同で債務を負って苦境にある国を支援する格好で、事実上の共同債務方式となる。

欧州委が5月末に発表した案では、基金の配分は5,000億ユーロが補助金、2,500億ユーロが融資となっていた。これに対して、財政規律を重視し、財政健全化に努めてきた倹約4カ国のオランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンが強く反発。6月の首脳会議で4カ国は、共同債務についてはEUが未曽有の経済危機に直面していることから譲歩し、受け入れる方向に転換したが、返済不要の補助金が大半を占める点を問題視し、同意を拒否していた。

今回の合意案では補助金を3,900億ユーロに削減し、融資を3,600億ユーロとすることになった。補助金はなお多いものの、倹約4カ国はEU予算の拠出が補助金受給を上回る純拠出国に拠出金の一部を払い戻す制度(リベート制)に基づき、各国の払い戻し額を増額するという妥協案と引き換えに、反対を取り下げた。

4カ国の主張に沿って、復興基金の受給国が構造改革や環境保護への取り組み強化などを進めることを支援の条件とすることでも合意した。支援の可否は加盟国による特定多数決(加盟国の人口に応じて票数を割り当てる投票制度)で決まる。対象国が条件を満たしていないと不満を持つ国が1カ国でもあれば支援を打ち切るという4カ国側の案については、支援対象国側が厳しすぎるとして反発し、同意を拒否したことから、欧州委が苦情を受け付けた上で最終判断するという案で落ち着いた。

このほか、法の支配が揺らいでいる国には復興基金だけでなくEU予算からの補助金交付を禁止する制度の導入も決まった。これも倹約4カ国が求めたものだが、標的とされたハンガリー、ポーランドが猛反発し、これが認められるなら復興基金計画そのものに拒否権を発動すると警告していた。このため、少数国による問題提起だけでは禁止とせず、加盟国の特定多数決で判断するという妥協案で合意した。

欧州委が復興基金のため調達した資金ついては、2028年から30年間をかけて返済する。返済の財源を確保するため、使い捨てプラスチック製品への課税、炭素排出規制がEUより緩やかな域外の国から輸入する製品に課税するといった案が決まった。

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