LVMHがティファニー買収で再合意、業績悪化で4億ドル減額

高級ブランド最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイ・ヴィトンは10月29日、9月に撤回を表明した米宝飾品大手ティファニーの買収をめぐり、両社が買収価格の引き下げで合意したと発表した。買収総額は約158億ドル(約1兆6,500億円)と、当初の合意から4億ドル下がることになる。2021年初めの手続き完了を目指す。

LVMHはティファニーの株式を当初より3.5ドル安い1株131.5ドルで買い取る。金額面を除いて他の条件に変更はなく、ティファニーの取締役会が28日に新たな買収提案を受け入れた。契約成立にはティファニーの株主による承認が必要だ。

LVMHは19年11月、ティファニーを162億ドルで買収することで合意したと発表した。宝飾品部門と米国事業の強化などが目的で、同業界では過去最大規模の買収となるはずだった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大が高級ブランド業界を直撃する中、LVMHは9月、買収計画を撤回した。デジタル税導入をめぐる米政府との対立を背景に、米側による報復関税を警戒する仏政府から買収延期の要請があったというのが撤回の理由。ただ、コロナ禍の影響でティファニーの株価が125ドル前後まで急落し、合意していた1株当たりの買い取り価格(135ドル)を大きく下回ったことで、LVMHが買収額の引き下げを図っているとの観測が浮上していた。

LVMHの対応に猛反発したティファニーは米国で訴訟を提起。LVMHもコロナ禍による業績悪化を理由とした買収契約の破棄は、MAE条項(買収対象企業の事業などに重大な悪影響を及ぼす事由が発生した場合、買い手が取引を中止できる権利を規定した取り決め)に該当するなどと主張して反訴し、両社の争いは泥沼化の様相を帯びてきた。しかし、欧州委員会が9月26日にLVMHによるティファニーの買収計画を承認したことなどから計画が再び前進し、双方は新たな買収条件で合意。訴訟でも和解が成立した。

LVMHはルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、フェンディ、ジバンシーといった高級ブランドや高級時計メーカーのタグホイヤーなどを傘下に持つ。宝飾品ではブルガリやショーメといったブランドがあるが、売上高に占める割合は低い。ティファニー買収によって高級宝飾品市場でのシェアが拡大し、カルティエなどを展開するスイスのリシュモンを抜いて業界最大手となる。一方、ティファニーはLVMHの販売網を通じ、世界規模で売り上げ拡大を図る。

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