EU加盟国と欧州議会の代表は5日、EUの次期中期予算(対象期間2021~27年)の詳細について合意した。承認を渋る議会側の要求に応じて、教育や医療などへの予算を上積みすることで決着にこぎ着けた。加盟国と欧州議会の承認を経て正式決定となる。
加盟国は7月のEU首脳会議で、次期中期予算を1兆743億ユーロとすることで合意した。これに対して、欧州議会が教育、研究・開発、気候変動対策などへの予算を増やすよう要求し、調整が難航していた。
今回の協議では、予算を160億ユーロ上積みし、これらの分野やコロナ禍からEU市民を守るプログラムに投じるという妥協案がまとまり、合意に至った。増額分については、欧州委員会がEU競争法違反で徴収する制裁金で主に賄うことも決まった。
EUでは新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けたEU経済の復興に向けた基金(コロナ復興基金)の創設が決まっている。同基金は7,500億ユーロ規模で、中期予算に組み込まれる。復興基金を含めた予算は約1兆8,000万ユーロに上る。
中期予算と復興基金をめぐっては、「法の支配」に問題がある国へのコロナ復興基金による支援とEU予算からの補助金交付を禁止する仕組みが設けられることになったが、標的となるポーランド、ハンガリーが猛反発しているという問題もある。
EU加盟国と欧州議会の代表は5日、禁止措置は対象国が裁判への権力の介入など法の支配の原則を破り、それがEUの健全な財政運営に大きな影響を及ぼすと判断された場合に限って発動するという妥協案で合意したが、両国はなお抵抗しており、中期予算に拒否権を発動する構えを見せている。
ただ、両国はEUの農業補助金などに大きく依存しており、中期予算の執行が遅れると補助金が受け取れないため、最終的には同意するとの見方も浮上している。