2020/11/23

EU情報

EUの復興基金・中期予算が混迷、東欧2カ国が「法の支配」めぐり抵抗

この記事の要約

EUのコロナ復興基金を含む次期中期予算(対象期間2021~27年)案の成立が、ポーランドとハンガリーの抵抗で混迷している。「法の支配」の順守を資金配分の条件とする仕組みについて両国が猛反発し、拒否権を発動しているためで、 […]

EUのコロナ復興基金を含む次期中期予算(対象期間2021~27年)案の成立が、ポーランドとハンガリーの抵抗で混迷している。「法の支配」の順守を資金配分の条件とする仕組みについて両国が猛反発し、拒否権を発動しているためで、19日に開いた首脳会議でも決着しなかった。基金の運用開始と予算執行を予定通り1月から開始できない事態を避けるため、年内の成立を目指して協議を進める。

7,500億ユーロ規模の復興基金は、欧州委員会が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、新型コロナによる経済の打撃が大きい国に補助金と融資の形で配分するというもの。EU加盟国が7月の首脳会議で合意していた。

しかし、法の支配が揺らいでいる国には、復興基金による支援、EU予算からの補助金交付を禁止する仕組みをめぐり、標的とされたポーランド、ハンガリーが反発し、調整が難航している。

EU加盟国と欧州議会の代表は5日、この仕組みの詳細について合意。10日には次期中期予算の詳細についても合意した。中期予算は1兆743億ユーロ。復興基金を含めた予算は約1兆8,000億ユーロに上る。ただ、中期予算は欧州議会と全加盟国が承認することが必要で、両国の同意が不可欠となる。

16日に開かれたEUの大使級会合では、法の支配に関する仕組みに関して、両国が拒否権を発動したが、加盟国の過半数が賛成したため承認された。しかし、予算に関しては全会一致での承認が求められるため、両国の抵抗で暗礁に乗り上げた。

今回の首脳会議では拒否権発動取り下げに向けて協議したが、両国が強硬な姿勢を崩さず、妥協案を話し合うこともなく20分で終了した。

右派が政権を握るポーランドとハンガリーでは、このところ強権支配が進み、EUは司法の独立、報道の自由などの問題をめぐって是正措置を何度も発動している。このため両国は、新たな仕組みが導入されると復興基金と補助金から締め出されるとして、中期予算の承認を「人質」に抵抗を続けている。

EUにとって多額のコロナ対策費を盛り込んだ次期中期予算の成立と復興基金の運用開始は、コロナ禍を乗り切れるかどうかの命運を握るもので、ポーランドとハンガリーも受益国となる。このため妥協の余地はあり、EU議長国であるドイツのメルケル首相が12月の首脳会議での合意に向けて、両国との調整を進めることになった。

EUには新政策などについて、加盟国のうち9カ国以上が賛同すれば、それらの国だけで先行して実施できるという規定がEU基本条約にある。フランスが同規定に基づき、ポーランド、ハンガリーが中期予算を承認しなければ、復興基金の運用を両国抜きで開始するという案をちらつかせて、歩み寄りを迫っている。

仮に中期予算が年内に承認されない場合、緊急措置として毎月、前年の予算の12分の1を上限に予算を執行できるが、使途は限定され、EUの予算運営が混乱するのは避けられない。