欧州委員会は9日、米航空機大手ボーイングに対する米政府の補助金交付に対抗し、EUが10日から年最大40億ドル相当の米製品に報復関税を課すと発表した。これによって航空機補助金をめぐる貿易摩擦が激化するが、米国の大統領選でバイデン氏の当選が確実となったことを受けて、新政権との対話による和解を模索する。
EUは米国から輸入する航空機と部品に15%、たばこや果汁飲料、海産物、蒸留酒、バッグ、トラクターなど幅広い製品に25%の関税を上乗せする。
EUと米国はエアバスとボーイングに対する補助金の違法性をめぐり、2004年からWTOで争ってきた。WTOは両社に対する開発支援や優遇税制などが違法な補助金に当たるとする裁定を下し、双方に是正措置を命じた。しかし、双方は相手がWTOの決定に従わず、引き続き補助金の支給を継続していると主張し、相互に再提訴した結果、WTOの上級委員会がどちらの補助金継続も不当との最終判断を下したことを受けて、まず米国が19年10月に年間75億ドル相当のEU製品に報復関税を課す措置を発動していた。
EU側の今回の決定は、WTOから10月に報復措置発動を承認されたことを受けたもの。ただ、欧州委のドムブロフスキス副委員長(通商担当)は、米国側がEUへの報復措置を取り下げれば、EUも同調すると発言。1月に発足する予定のバイデン政権と交渉し、長年に及ぶ通商紛争を終息させたい考えを示した。