独連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)は18日、感染防止法改正案をそれぞれ可決した。新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて連邦政府と州政府が取り決める規制の法的な根拠をこれまでよりも明確化することが法改正の最大の柱。法案は大統領の署名を経て19日付で施行された。
新型コロナ感染症の流行が本格化した3月以降に導入された接触制限や営業規制などの措置は基本法(憲法)で保障された権利を著しく制限している。これらの措置は感染防止法28条を根拠としているものの、同条にはどのような状況下でどのような制限措置を行政機関が実施できるかがこれまで具体的に明記されていなかった。
これに対しては当初から批判があったものの、連邦憲法裁判所(BVerfG)は最初のロックダウンが実施された今春、新型コロナが未知の感染症で感染拡大などを予知できないことを理由に、感染防止法28条の包括条項(法律の運用に大きな裁量の余地を認めた規定)に基づく制限措置を容認した。ただ憲法裁は同時に、制限措置に期限を設けることと、制限措置が必要かどうかを常に検証することも要求していた。
現在は新型コロナの流行が始まってからすでに数カ月の時間が経過し、同感染症に関する知見が数多く得られている。このため、制限措置に対する裁判所の判断は以前より厳しくなっており、政府はそうした変化を踏まえ感染防止法改正案を作成。議会に提出した。
改正案では制限措置を実施できるケースを、世界保健機関(WHO)が「世界的な緊急事態」を宣言するか、国内の複数の州で感染症の流行が危機的な状況にある場合に限定。具体的に実施できる制限措置としては、社会的距離やマスク着用の義務化、文化・スポーツイベントの禁止などが明記された。デモやミサ、外出の制限など強度の規制については、軽度の制限措置がすでに取られたにも関わらず十分な効果が出ていない場合に限られる。
改正案にはこのほか、新型コロナワクチンの接種センター設置に関する規定や、子供が学級閉鎖や自主隔離の対象となった場合に就労者に支給する補償金のルールなども盛り込まれている。