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2020/12/2

総合 - ドイツ経済ニュース

ロックダウン延長・強化で合意、年末年始は接触制限緩和

この記事の要約

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は11月25日にテレビ会議を開催し、現在実施しているロックダウン(都市封鎖)の延長と強化を取り決めた。11月初旬に導入した制限措置の効果で新型コロナウイルスの新規感染者 […]

ドイツのアンゲラ・メルケル連邦首相と国内16州の首相は11月25日にテレビ会議を開催し、現在実施しているロックダウン(都市封鎖)の延長と強化を取り決めた。11月初旬に導入した制限措置の効果で新型コロナウイルスの新規感染者数はほぼ頭打ちとなっているものの、水準自体は依然として極めて高いことから、期限を少なくとも12月20日まで延長。1日からは新たな規制を導入した。

国(連邦)と州は新規感染者数の急増を受けて10月28日、ロックダウンの再導入を決定。11月2日付で実施した。期限は当初、11月末となっていた。

だが、人口10万人当たりの直近7日間の新規感染者数は25日時点で140人と極めて多い。同50人を超えると感染経路の追跡・遮断が難しくなり、最終的に医療崩壊へとつながりかねないことから、国と州はロックダウンの延長・強化を通してこれを50人未満へと引き下げる考えだ。

11月2日付で実施された制限措置では、公共の場に3家族以上が集まることが禁止されたほか、2家族以内でも許容上限が10人となっていた。12月1日からは制限対象が私的な場にも拡大。許容上限は5人となった。14歳未満の子供は同5人にカウントされない。

12月23日から1月1日までの期間についてはこの制限措置を緩和する。クリスマスが家族や友人との紐帯を保つうえで極めて重要なイベントであることを考慮したもので、家族数にかかわりなく最大10人が集まることが認められる。

人が行きかう屋内と公共交通機関ではマスクの着用など口と鼻を覆うことが1日付で義務付けられた。店舗の前と駐車場でも着用しなければならない。

小売・卸売店では来店者数規制が導入された。店内の客数は売り場面積800平方メートル以下の店舗で10平方メートル当たり1人、同800平方メートル超の店舗で20平方メートル当たり1人が上限となっている。

恒例の年越し花火の打ち上げは禁止されないものの、国と州は市民に自粛を呼びかけている。人通りの多い広場や道路に関しては各自治体が禁止措置を取る。

学校のクリスマス休暇は全国一律で開始日が12月19日に前倒しされる。このため子持ちの被用者のなかには同日以降、出社できなくなる人も出てくる見通しだ。

企業に対しては、社会的距離を確保できない職場でのマスク着用を義務付けた。また、在宅勤務の活用や休業措置を通して12月23日~1月1日の期間、職場を閉鎖するよう勧告している。

連邦政府はスキーシーズンが本格化すること見据え、1月10日までスキー場の閉鎖を欧州全域で実現したい考えを明らかにした。新型コロナ感染の第一波が2月に欧州を襲った際はアルプスのスキー場が大きな起点となったことが背景にある。スキー場を営業停止とすることでクラスターの形成と欧州各国への感染拡大を防ぐ狙いだ。だが、これに対してはスキー観光を主要な産業とする隣国オーストリアが反発しており、調整は難航が予想される。

「国の支援に限界」=官房長官

ドイツ国内ではコロナ禍で悪化した経済を底支えするための費用負担が政治の大きな争点となり始めている。財政出動がかつてない規模に達しているうえ、今後も膨らむ見通しのためだ。最大与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)のラルフ・ブリンクマン連邦議会(下院)院内総務は、コロナ禍に伴う州の費用負担は国(連邦)に比べ少なすぎると批判した。

コロナ対策の影響で国の1~10月の新規債務は891億ユーロに達した。ロックダウン再導入のしわ寄せを受ける企業に前年同月の売り上げの75%を保障する政策を11月に実施したことから、国の支出は同月だけで少なくとも150億ユーロ膨らんだ。書き入れ時の12月は1週間当たりの補償額が45億ユーロに達する見通しだ。

ただ、州は独自にコロナ対策を実施しており、各州の財政負担も大きい。ザクセン州のミヒャエル・クレッチュマー首相(CDU)は同州がすでに60億ユーロの新規債務を計上していることを挙げ、ブリンクマン院内総務に反論した。ノルトライン・ヴェストファーレン州のアーミン・ラシェット首相(CDU)も「州が何もしていないと言うことは全く公正でない」と不快感を示した。

こうした論争が起こるのは財政の余地が国と州でともに狭まっているためだ。連邦政府のヘルガブラウン官房長官は『ハンデルスブラット』紙に、国の財政には限界があると述べ、支援のあり方を1月から見直す考えを表明した。