イタリア新首相にドラギ氏就任、左派から極右まで幅広く支持

イタリアのマリオ・ドラギ新首相は13日、ローマの大統領府で他の閣僚とともに宣誓式に臨み、新内閣が発足した。新政権は最大与党の左派ポピュリズム政党「五つ星運動」や中道左派「民主党」、最大野党の極右「同盟」など、幅広い勢力を結集した連立政権となる。新型コロナウイルス感染拡大で深刻な打撃を受けたイタリア経済の立て直しが急務となる。

ドラギ氏は宣誓式で「共和国に忠実であることを誓う。憲法と法律を遵守し、国益のために職務を遂行する」と述べた。マッタレッラ大統領は12日に閣僚人事を承認しており、上下院の信任を経てドラギ政権が正式に発足する。

閣僚は23人で、政治家と実務家が混在する。女性は8人。主要閣僚では経済財務相にイタリア中央銀行のフランコ上級副総裁を起用。五つ星前党首のディマイオ外相と、新型コロナ対策を率いるスペランツァ保健相はともに留任する。

新政権にとって目先の課題は新型コロナ危機からの回復の道筋を描くことだ。EUから受け取る2,000億ユーロ(約25兆円)超の復興基金を活用した成長戦略を直ちに策定する必要がある。新型コロナ対策ではワクチンの迅速な接種がカギを握る。

ドラギ氏は中銀総裁を経て、2011年11月から8年間にわたり欧州中央銀行(ECB)総裁を務め、マイナス金利政策や量的緩和政策を推し進めて欧州債務危機を収束させた。マッタレッラ大統領は少数政党の連立褫奪で政権運営に行き詰まり、1月末に辞任したコンテ前首相の後任として、危機対応能力に優れたドラギ氏に白羽の矢を立てた。

内閣に加わっていないのは極右政党「イタリアの同胞」のみで、左派から極右まで幅広い政党が支持するドラギ政権は挙国一致内閣に近い。ただ、連立与党はこれまで対立してきた政党の寄せ集めで、EUに懐疑的な五つ星は当初、ECBのトップを務めたドラギ氏に対して不支持を表明していた経緯もある。安定した政権運営ができるか、早々にドラギ氏の政治手腕が試されることになる。

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