イタリア政府は4日、EU域内で製造された新型コロナウイルス用ワクチンの域外への輸出を規制する制度に基づき、英製薬大手アストラゼネカが伊国内で製造したワクチンのオーストラリアへの輸出を差し止めたと発表した。輸出が不許可となったのは、同制度が導入されてから初めてだ。
アストラゼネカは英オックスフォード大学と共同開発した新型コロナワクチンのうち、伊国内の拠点で製造した約25万回分をオーストラリアに輸出する許可を同国政府に2月24日に申請していた。伊外務省は輸出差し止めについて、ワクチンが国や他のEU加盟国で不足しており、特にアストラゼネカによる域内への供給が予定より遅れているためと説明。オーストラリアの新型コロナ感染拡大が深刻でないことも理由に挙げた。
EUの欧州委員会は1月30日からEU域内で製造された新型コロナワクチンの域外への輸出を許可制としている。EUと正式契約を結んだ製薬会社によるワクチン供給が遅れていることが背景にある。メーカーは生産拠点がある国の政府に輸出を申請し、許可を得なければならない。当該国から通知を受けた欧州委が、対象メーカーがEUとの契約を順守しているかどうかなどをチェックした上で、輸出許可の可否を同国に勧告するといった仕組みだ。
イタリアでは先ごろ就任したドラギ首相が、ワクチン不足によって国内での接種が予定通り進んでいないことに強い危機感を示している。このため、政府はアストラゼネカが輸出許可を申請した2日後に、不許可の意見を付けてEUに通知。欧州委の同意を得て、正式に輸出を差し止めた。
EUは輸出許可制を3月末までの時限的な措置とする方針を示していた。しかし、EU筋がロイター通信に明らかにしたところによると、6月末まで延長することを検討しているという。