欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/3/15

EU情報

ECBが資産購入加速を決定、金利上昇を懸念

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は11日にフランクフルトで開いた定例政策理事会で、コロナ禍対策として実施している「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」に基づく資産購入のペースを4~6月期に加速させることを決めた。景気低迷が […]

欧州中央銀行(ECB)は11日にフランクフルトで開いた定例政策理事会で、コロナ禍対策として実施している「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」に基づく資産購入のペースを4~6月期に加速させることを決めた。景気低迷が続くのが不可避となっているほか、長期金利の上昇が経済をさらに圧迫するのを防ぐ狙いがある。

国債、社債などの資産を買い入れるPEPP は、ECBが新型コロナウイルスの感染拡大で揺れるユーロ圏経済を下支えするため、2020年3月に導入した措置だ。当初の資産購入枠は7,500億ユーロだったが、6月に1兆3,500億ユーロに拡大。12月には5,000億ユーロ上積みし、1兆8,500億ユーロとすると同時に、実施期限を21年6月末から22年3月末まで延長することを決めていた。

ECBは今回の理事会で、主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.5%に据え置き、PEPPの購入枠も維持することを決めた。ただ、ユーロ圏経済の先行きが依然として不透明な中、金融環境が厳しくなるのを防ぐ必要があるとして、4~6月期に「1~3月期よりもかなり速いペース」で購入を進める方針を打ち出した。

現時点で残っているPEPPの購入枠は約1兆ユーロ。ECBは同期に「市場の動向に応じて柔軟に買い入れる」と述べるにとどまり、具体的な購入額については明らかにしなかった。

ユーロ圏は米国などと比べて経済活動の再開が遅れており、20年10~12月期の域内総生産(GDP)は前期比0.7%減と低迷。インフレ率は1月からプラスに転じたが、原油価格上昇など一時的な要因によるもので、物価の基調は依然として弱い。ECBは同日公表した最新の内部経済予測で、21年の成長率を前回(12月)の3.9%から4.0%に上方修正したが、22年は0.1ポイント下方修正して4.1%とした。インフレ率は21年が1.5%、22年が1.2%で、それぞれ前回の1.0%、1.1%から引き上げたが、目標とする2.0%にはほど遠い。

さらにECBが懸念しているのが、ユーロ圏の長期金利の上昇。米国の金利が、同国経済が予想より早く回復するとの期待感から上昇していることに連動したものだが、景気回復が遅れているユーロ圏で金利だけが上昇すると経済が一層圧迫される。今回の決定には、国債購入を一時的でも拡大することで、このところ売りが活発化している長期国債を買い支え、長期金利の指標となる国債利回りの上昇を防ぐ意図もある。

ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、「金利上昇を放置すると、経済の全分野で時期尚早の状況で金融環境が厳しくなる。これは好ましいことではない」と述べた。