欧州銀行監督機構(EBA)は1日、EU域内の銀行に環境や社会問題、ガバナンス(企業統治)に関連したリスクについての情報開示を義務付けるルールを補完する実施技術基準(Implementing Technical Standards=ITS)の草案を公表した。気候変動など環境問題の解決に寄与する事業活動の評価指標として「グリーン資産比率(green asset ratio=GAR)を導入し、各行に開示を求めることが柱。6月1日まで意見募集を行い、2022年の実施を目指す。
金融機関に対する環境・社会・ガバナンス(ESG)リスクについての情報開示ルールは、欧州委員会が18年3月に発表した「持続可能な成長のための金融(サステナブル・ファイナンス)に関する行動計画」に基づいて策定されたもの。情報の透明性を高めて気候変動対策をはじめとするサステナビリティ事業への投資を促す一方、環境問題への取り組みを誇張して投資家をミスリードする「グリーン・ウォッシング」を排除することを主な目的としている。EBAは欧州委からの指示を受け、情報開示ルールの導入に向けて実効性のある施策を検討していた。
ITSの柱となるグリーン資産比率(GAR)は業績評価指標(KPI)の1つで、各行のバランスシートに占める環境関連の融資や株式保有額の割合を指す。EU共通の分類体系(タクソノミー)に基づいて持続可能な資産かどうか判断され、例えば融資の対象を化石燃料関連の事業から再生可能エネルギー関連のプロジェクトに切り替えた場合、GARが大きく上昇することになる。
EBAは域内の銀行に対し、22年からESGリスクについての情報開示を義務付け、バランスシートへの影響やリスク対応とともに、年次報告書でGARの開示を求める方針。各国政府や中央銀行の資産についてもGAR開示の対象とすることを提案している。