欧州委員会は3月31日、ポーランドの司法制度改革を巡る新法が司法の独立を定めたEU法に違反しているとして、同国をEU司法裁判所に提訴すると発表した。欧州委はポーランド政府に是正を求める勧告書を送っていたが、対応が不十分なため提訴に踏み切る。また、司法裁が判断を下すまでの暫定措置として、新法の適用を差し止める仮処分も求める。
ポーランドでは2015年の総選挙で愛国主義的な色彩の強い「法と正義」が政権を掌握して以来、違憲判決を出すのが難しくなるよう憲法裁判所の仕組みを変えたり、最高裁判事の人事権を政府が掌握するための法改正を行うなど、政権による司法介入を強める制度改革が進められてきた。欧州委はポーランドの司法制度改革がEUの基本理念である「法の支配」に反するとして同国を批判し、18年10月には最高裁判事の定年を引き下げる法改正が司法の独立を損なうとして提訴。司法裁は19年7月、欧州委の主張を認め、新法はEU法に違反するとの判断を示した。
欧州委が新たに問題視しているのは、20年2月に導入された裁判官の懲戒制度に関する法律。最高裁判所に裁判官の懲戒処分を管轄する機関が新設され、裁判官の判断が政治活動に該当するとみなされた場合、免責の剥奪や職務停止、減給などの処分を受ける恐れがある。政府の意向に反する判決を阻止するのが狙いとみられ、欧州委はポーランド政府にくり返し是正を求めてきたが、十分な回答は得られなかった。
欧州委のレインダース委員(司法担当)は記者会見で「新法はポーランドにおける司法の独立を損ない、EUの法秩序に深刻な害を及ぼす恐れがある」と指摘。これに対し、ポーランド政府の報道官は「司法制度はもっぱら内政問題だ。提訴は法的にも事実上も正当化できない」と反論した。