フランスのマクロン大統領は3月31日、新型コロナウイルス感染拡大を受け、パリなどで実施していた外出制限を4月3日から全土に拡大すると発表した。5日からは全土で学校も閉鎖し、遠隔授業に切り替える。フランスでは感染力が強いとされる英国型変異ウイルスの流行で1日の新規感染者数が6万人近くに上る日もあり、医療体制がひっ迫している。政府は全国規模の外出制限と一斉休校で感染を抑制しながらワクチン接種を加速させ、5月半ばから段階的に規制を緩和する方針だが、昨年3月のロックダウン(都市封鎖)時に比べると規制は緩く、今回の措置で感染を抑えられるか疑問視する声も上がっている。
マクロン氏はテレビ演説で「これまでの対策は効果を上げたが、変異ウイルスの流行で感染が加速しており、制御できなくなる恐れがある」と強調。1月上旬には3%程度だった新規感染者に占める英国型変異ウイルスの割合が、現在は約80%に増加していることや、集中治療室の重症者数が5,200人以上と、昨秋の第2波のピーク時を超える水準となったことなどに触れ、国民に規制強化に対する理解と協力を求めた。
フランス全土での外出制限は昨年の春と秋に続く3度目で、期間は4週間。食料品店や薬局などを除いて店舗は閉鎖され、自宅から10キロ以上離れた場所に移動する際は正当な理由を記した証明書を携行する必要がある。
一方、休校措置は昨春の第一波以来、今回が2度目。マクロン氏はこれまで、学校閉鎖は「最後の手段」と位置づけてきたが、感染拡大により各地でクラス単位での閉鎖が相次いでいることから、幼稚園から高校までの一斉休校に踏み切った。期間は幼稚園と小学校が3週間、中学校と高校は4週間。ただし、それぞれ2週間の春休みを挟むため、実際の閉鎖は1~2週間となり、その間はオンライン授業などで対応するという。
フランスでのワクチン接種率は現時点で10%程度にとどまっている。マクロン氏は各地に大規模な会場を設けてワクチン接種を加速させ、夏の終わりまでに18歳以上の全ての国民への接種を終えたい考えを示した。ただ、欧州では英国を除いてワクチンの供給が遅れており、計画通りに接種が進むかは不透明だ。