ドイツ政府は12日の閣議で、気候保護法(KSG)改正案を承認した。現行法を違憲とする連邦憲法裁判所の判断と、EUの温室効果ガス排出削減目標引き上げを踏まえたもので、カーボンニュートラル(気候中立)実現の時期を前倒しするほか、2030年の中間削減目標を引き上げることなどが改正案の柱となる。環境政党の野党・緑の党が9月の次期連邦議会選挙で躍進すると予想されることから、温暖化防止分野で積極的な姿勢を打ち出し、選挙戦を有利に進める狙いがうかがわれる。同選挙前に法案を可決・成立させたい考えだ。
連邦憲法裁は4月29日、KSGを違憲とする決定を下した。50年までに炭素中立を実現するとしているにも関わらず、同法に明記されている削減目標値が31年以降は記されていないことを問題視。排出削減の負担の多くを31年以降に先送りすることは将来の世代の自由権を不当に制限することになるとして、31年以降の温室効果ガス排出削減目標値を改正法に盛り込むことを議会に義務付けた。
EUは二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量が同一となる炭素中立を50年までに実現するという目標実現に向けて、30年時点の中間目標を設定している。同中間目標の排出削減幅はこれまで1990年比40%となっていたが、昨年12月の首脳会議で少なくとも55%に引き上げることで合意。近く正式決定することになっている。
独政府は憲法裁の命令とEUの中間目標引き上げを受けてKSG改正案を作成した。炭素中立実現の時期を従来の50年から45年に前倒しするとともに、30年の中間削減目標を55%から65%に引き上げた。
さらに、31年から40年までの排出削減目標が明記された。削減幅は31年が67%、32年が70%、33年が72%、34年が74%、35年が77%、36年が79%、37年が81%、38年が83%、39年が86%、40年が88%となっている。41年から炭素中立を実現する45年までの各年については32年までに目標値を決定する。50年以降は植林や再湿地化を通してCO2の排出量が吸収量を下回る「ネガティブ・エミッション」を実現する考えだ。