欧州委が法人税制統一に向けた政策文書発表、多国籍企業に実効税率の公表義務化

欧州委員会は18日、EU域内における法人税制の統一に向けた政策文書を発表した。課税の透明性を高めて巨大IT企業などによる税逃れを防ぐため、2022年中に域内で活動する多国籍企業に実効税率の公表を義務付ける法案を策定するほか、年内にペーパーカンパニーの監視強化策をまとめる。

EUでは加盟国ごとに異なる法人税制が単一市場におけるビジネスの妨げになっているとして、税制の統一に向けた協議を進めてきた。欧州委は11年、「共通連結法人税課税標準(CCCTB)」の導入を柱とする法人税制の改革案を打ち出したが、税制の統合に批判的な英国などの反発で協議が紛糾。多国籍企業による税逃れ対策の一環として、16年に改めてCCCTB導入を提案したものの、いまだに合意に至っていない。

「21世紀の事業課税」と題する政策文書によると、欧州委は経済協力開発機構(OECD)や主要20か国・地域(G20)で進行中の国際的な税制改革に関する議論を踏まえ、23年末までにCCCTBに代わる仕組みとして「欧州でのビジネス:所得課税の枠組み(Business in Europe: Framework for Income Taxation=BEFIT」を策定する。

欧州委の提案によると、BEFITの柱は国内の税率が適用された税収を計算式に沿って加盟国に分配するというもので、大枠ではCCCTBと同様の仕組みになっている。一方、経済状況が異なる加盟国間で税収をバランスよく分配するため、無形資産や労働力などをどのように計算式に反映させるかなどが重要な検討課題となる。

欧州委のジェンティローニ委員(経済担当)は「EU域内の税制を見直すべき時が来た。欧州経済が新たな成長モデルに移行するのに伴い、税制も21世紀の課題に対応しなければならない」と強調。大手IT企業など多国籍企業に対する法人税制について、早ければ6月のOECD会合で合意される可能性に触れ、国際的な合意内容を踏まえて域内における課税ルールの統一を目指す考えを示した。

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