EU統計局ユーロスタットが1日に発表したユーロ圏の5月のインフレ率(速報値)は前年同月比2.0%となり、前月の1.6%から0.4ポイント拡大した。上昇はエネルギーの値上がりなどによるもので、インフレ率は欧州中央銀行(ECB)が目標とする2.0%に達した。(表参照)
インフレ率は2018年10月以来の高水準。コロナ禍による個人消費停滞で20年12月まで5カ月連続でマイナスとなっていたが、低迷していた原油価格の上昇やドイツで付加価値税(VAT)減税が12月に終了したことなどで、1月からプラスに転じていた。
分野別の上げ幅はエネルギーが13.1%となり、前月の10.4%から急拡大した。工業製品は0.7%、サービスは1.1%で、それぞれ前月を0.3ポイント、0.2ポイント上回った。
インフレ率がマイナスとなったのはギリシャだけ。主要国はドイツとスペインが2.4%、フランスが1.8%、イタリアが1.3%の幅で上昇した。
ユーロ圏のインフレ率は、ドイツのVAT引き上げの影響が年内は続き、各国がコロナ禍対策として実施している減税措置も縮小されることから、当面はさらに拡大するのが必至だ。ただ、ECBが金融政策で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ率)は0.9%にとどまっており、物価の基調は依然として弱い。ECBは物価の急上昇を一時的な要因によるもので、22年には2.0%を再び割り込むとみており、10日の定例政策理事会で現行の金融緩和策を維持する見込みだ。