財務省と法務省に立ち入り捜査、連邦議会選絡みの政治的措置か

独オスナブリュック検察当局は9日、首都ベルリンにある連邦財務省と連邦法務省で立ち入り捜査を実施した。資金洗浄に絡む税関職員への捜査の一環。両省はともに社会民主党(SPD)が大臣ポストを握っているうえ、SPDのオーラフ・ショルツ首相候補は財務相を務めていることから、今回の捜査の背景には急速に上昇しているSPDとショルツ氏の人気を低下させるための政治的な意図があるとの見方も出ている。

両省への捜査は、麻薬・武器取引の資金洗浄やテロ資金支援などの情報収集・評価を担当する独税関の「ファイナンシャル・インテリジェンス・ユニット(FIU)」に対する捜査の一環として行われた。検察によると、FIUは銀行からの通報で得た資金洗浄疑惑に関する情報を捜査当局に伝達せず、捜査の足を引っ張った容疑が持たれている。オスナブリュック検察は地元の貯蓄銀行が通報した情報にかかわる案件であることから、捜査を主導している。ケルンにあるFIU本部への立ち入り捜査は昨年7月に実施した。

今回の捜査はFIU本部の捜査で得られた情報をもとに行われたとみられている。検察は声明で、「FIUの決定に両省の指導部、責任者ないし上位機関が関与していたのかどうか、また関与していたとすればどの程度なのか」を調べるために連邦財務省と連邦法務省への立ち入り捜査を実施したことを明らかにした。

ドイツでは26日に連邦議会選挙が行われる。メディア報道によると、今回の捜査がその直前に行われたのは偶然でないとの見方がある。オスナブリュック検察の上位機関であるニーダーザクセン州法務省はSPDの競合であるキリスト教民主同盟(CDU)が掌握しているためだ。捜査令状の発行日が8月10日と約1カ月も前であることはこの疑惑を強める要因となっている。令状の発行日と捜査日が大きく隔たっている理由をオスナブリュック検察は明らかにしていない。同州法務省は捜査への事前関与はないとの立場だ。連邦財務省は捜査に協力する意向を表明している。

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