EUの欧州医薬品庁(EMA)は19日、米製薬大手メルクが米リッジバック・バイオセラピューティクスと共同開発した新型コロナの飲み薬「モルヌピラビル」の緊急使用を認めると発表した。審査は終えていないが、EU域内で新型コロナ感染が急速に再拡大していることから、緊急時に成人への使用を認めることを決めた。
EMAの勧告によると、モルヌピラビルの使用が認められるのは妊婦を除く成人。軽症で酸素吸入は不要だが、重症化のリスクがある患者に対して、発症から5日以内に投与する。服用は5日間に1日2回。
モルヌピラビルは新型コロナウイルスの遺伝情報が載っている酵素が複製される際に、遺伝子コードにエラーを起こさせ、ウイルスが増殖するのを抑える薬。臨床試験(治験)では発症初期に服用すると入院、死亡のリスクが半減する効果が確認されている。4日に英当局が世界で初めて承認した。
EMAは10月25日にモルヌピラビルの承認に向けた「逐次審査」を開始したと発表したばかり。まだ審査中だが、EU各国で感染者が急増していることから、これまでのデータで緊急使用に問題はないと判断し、勧告を出した。これによってEU各国は独自の判断で使用を開始できる。
新型コロナの飲み薬の承認はEUで初めて。EMAは同日、米ファイザーが開発した飲み薬「パクスロビド」の逐次審査を開始したと発表した。逐次審査はワクチンや治療薬の承認手続きを迅速化するため、試験データを順次審査する制度。通常は治験の最終結果が出てから承認が申請され、審査を開始するが、同制度では承認が正式に申請される前の段階で、最終的な試験結果を待たずに入手可能なデータから順次審査を進める。このため通常より短期間で審査を完了することができる。
EMAはモルヌピラビルと同様に緊急使用を認める方向で審査を進め、「可能な限り早期に」勧告を出したいとしている。