欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2021/11/29

EU情報

欧州で「オミクロン株」が新たな脅威に、独・伊・英などで感染確認

この記事の要約

世界が新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の脅威にさらされている。とくに欧州では感染が相次ぎ、これまでにドイツ、イタリア、ベルギー、英国などで確認された。この変異株はデルタ株より感染力が高く、既存のワクチンが […]

世界が新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の脅威にさらされている。とくに欧州では感染が相次ぎ、これまでにドイツ、イタリア、ベルギー、英国などで確認された。この変異株はデルタ株より感染力が高く、既存のワクチンが効きにくい可能性があり、EUや各国が水際対策強化に乗り出したものの、感染拡大の懸念が広がっている。

南アフリカで最初に確認された同変異株は、スパイクたんぱく質の変異が激しいため、免疫を回避し、感染を急速に広める可能性が指摘されている。世界保健機関(WHO)は26日、デルタ株のような警戒レベルが最高の「懸念される変異株」に指定し、「オミクロン株」と命名した。

最初に確認されたのは南アフリカとボツワナだが、南アフリカの研究所などが25日に感染例の急増を公表してから間を置かずにアフリカ大陸以外にも飛び火し、26日の時点で香港、イスラエルとEU加盟国のベルギーで感染者が出た。欧州では英国が先陣を切り、25日に南アフリカ、ボツワナと近隣諸国の計6カ国からの渡航を禁止すると発表。これに続いてEU加盟国は26日、南アフリカ、ボツワナ、エスワティニ、レソト、モザンビーク、ナミビア、ジンバブエの7カ国からの渡航を制限することで合意した。

しかし、27日から28日にかけてドイツ、イタリア、英国、チェコ、オランダ、デンマークでも感染が確認された。フランスとオーストリアでも感染が疑われる例が出ている。

最も感染が多いのはオランダ。同国では26日、南アフリカからアムステルダムに到着した2便の航空便の旅客のうち61人が新型コロナウイルスに感染していることが判明し、解析した結果、28日に13人がオミクロン株に感染したことが分かった。

2人の感染者が出た英国では、ジョンソン首相が27日、新たにアンゴラ、マラウイ、モザンビーク、ザンビアの4カ国を渡航制限の対象に加えると発表。さらに、イングランドで店舗内と公共交通機関でのマスク着用を義務化した。海外からの渡航者に対して、到着から2日以内のPCR検査と、陰性と判明するまでの隔離を求めることも決めた。

EUの欧州疾病予防管理センター(ECDC)は26日、オミクロン株について感染力やワクチンの効果などは未知数だが、脅威が大きいのは確実だとする声明を発表した。

一方、新型コロナワクチンのメーカーは、早くも対応に乗り出している。米ファイザーと独ビオンテックは26日、両社が共同開発したワクチンが新変異株でも有効かどうかを2週間以内に検証し、必要となればオミクロン株に対応するワクチンの供給を100日後には開始できるとの見通しを示した。米モデルナの最高医療責任者(CMO)は28日、英BBC放送とのインタビューで、22年初めにも改良したワクチンの供給が可能だと述べた。

欧州では新型コロナ感染が再拡大しており、いまや世界の感染の中心地となってきた。EUと加盟国はこのところ矢継ぎ早に様々な対策を打ち出している(後続記事参照)。しかし、猛威を振るうデルタ株の流行を前提としたもので、ロックダウン(都市封鎖)の再実施は一部の国にとどまっている。

オミクロン株の脅威が現実となれば、既存のワクチンに頼りながら経済を正常化する「コロナ共生」路線が揺らぎ、ロックダウンをはじめとする厳しい対策で感染封じ込めを図る方向に舵を切る国が続出する事態も予想される。