欧州委員会は17日、森林破壊を防止するための対策が不十分な国・地域からの農産品や木材の輸入を厳しく制限する規則案を発表した。地球温暖化や生物多様性を脅かす要因とされている違法な森林伐採や、商品作物の農地拡大による森林破壊の防止を目的として、EU域内に製品を輸入する事業者にデューデリジェンス(適正評価手続き)の実施を義務付ける内容。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て、2023年までの新ルール導入を目指す。
規則案によると、デューデリジェンスの対象となるのは大豆、牛肉、パーム油、木材製品、カカオ、コーヒーの6品目と、皮革、チョコレート、家具などの派生製品。域内の輸入業者は、対象となる製品が2020年12月31日以降の違法な伐採などによって開発された農地で生産されたものでないことや、相手国の法律に従って生産されたことなどを事前に確認し、拠点を置く加盟国の当局に報告書を提出することが義務付けられる。ただし、欧州委が十分な森林保護対策を講じており、森林破壊のリスクが低いと判断した国・地域から輸入される製品に関しては、デューデリジェンスの実施義務が免除される。
EUが規制を強化する背景には、熱帯雨林の保護に消極的なブラジルなどへの圧力を強める狙いがある。4億5,000万人の消費者を抱えるEUに農産品などを輸出できなくなれば原産国は深刻な打撃を受けるため、適切な対策を講じる必要に迫られる。
欧州委のティメルマンス上級副委員長(気候変動担当)は「森林破壊防止に向けた新規則は、世界的にみても最も野心的な法的側面からのアプローチだ」と強調した。