英政府は16日、米半導体大手エヌビディアが英半導体設計大手アームを買収する計画について、追加調査を実施すると発表した。買収が市場の競争、国家安全保障の両面に及ぼす影響を詳細に調査し、承認の可否を判断する。
アームはソフトバンクグループ傘下の企業。ソフトバンクは2020年9月、アームの全株式をエヌビディアに最大400億ドルで売却することで合意したと発表していた。
同買収をめぐっては、アームが持つ知的財産権をエヌビディアが握ることで、同社のライバルである半導体企業がこれまでようにアームからライセンスの供与を受けることができなくなるといった懸念が浮上している。英国の競争・市場庁(CMA)が21年1月から競争上の観点で調査を開始。さらに、半導体が防衛技術など安全保障に大きく関わるため、アームが外国企業の手にわたることで、どのような影響が出るかも4月から調査していた。
ドリス・デジタル・文化相は、アームが設計した半導体が世界のスマートフォンメーカーの大半で利用されているなど、同社が「技術の世界的なサプライチェーンで比類のない地位にある」として、追加調査をCMAに命じたことを明らかにした。調査期間は24週間。8週間の延長が可能だ。
アーム買収については、EUの欧州委員会、米国、中国も調査を行っている。欧州委は10月末、初期調査での承認を見送り、本格的な調査に入ったと発表していた。
ソフトバンクが16年にアームを買収した際は、英の国民投票でEU離脱が決まった直後で政府が対応に忙殺されていたため、詳細な調査が行われずに承認された経緯がある。