EUのワクチン接種証明、有効期間9カ月に

欧州委員会は25日、EU共通の新型コロナウイルスワクチン接種証明書について、有効期間を9カ月間とすることを提案した。欧州でコロナ感染が急拡大する中、免疫力が低下した人が域内を旅行するのを制限するのが目的。有効期限が設けられることで、追加接種(ブースター)を受けないと証明書が失効することになる。

EUでは7月、各国が「EUデジタルCOVID証明書」と呼ばれる共通証明書をワクチン接種者やPCR検査で陰性の人、コロナに感染して回復した人に発行し、証明書を持つ人が、入国時のPCR検査、入国後の一定期間の隔離なしに域内を自由に移動できるようにする制度の運用が正式に開始された。これまで有効期間は定められていなかった。

期限を設けるのは、ワクチン接種の証明。接種を終えてから9カ月間に限って有効とする。EUでは接種完了が2021年4~9月に集中したことから、追加接種を受けなければ無効となるケースが22年初めには出てくる。

欧州委はEUの欧州疾病予防管理センター(ECDC)が24日、域内の全成人を対象とする追加接種を行うよう勧告したことを受け、同措置を提案した。ECDCは6カ月の間隔を空けて追加接種するよう推奨しているが、欧州委は各国の準備に時間がかかることを考慮し、有効期間を9カ月とした。

EUでは一部の国が追加接種を行っている。欧州委は証明に有効期限を設けることで、他の国にも追加接種を促す形となる。追加接種によって有効期限をどの程度延長するかについては、判断に必要となるデータが現時点でないため、検証を進めた上で決定する。

接種証明に関する新ルール導入は、欧州委が同日発表したEU域内間の旅行に関する規則の見直し案の一部。このほか、加盟国の感染状況を新規感染者数などに基づき「緑」「オレンジ」「赤」「ダークレッド(暗赤色)」の4つに色分けし、各国にリスクの度合いに応じた渡航制限を求める制度の改定も提案した。最も安全な緑の国からの旅行者は、接種証明書なしでも他の国に制限なしで渡航できるようにする。ダークレッドの国からの旅行者とワクチン未接種者については、出発前のPCR検査、入国後の10日間の隔離を求める。

色分けの基準も変更する。新規感染者、ワクチン接種率、感染検査の実施数の3基準のうち接種率を重視した加重平均でリスクを数値化する方式に改める。

一連の新ルールは加盟国の承認が必要。22年1月10日からの適用を目指す。

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