EU加盟国は16日に開いた首脳会議で、域内で新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染が拡大している問題について協議し、すべての人がワクチンを打ち、追加接種(ブースター接種)も受けることが極めて重要という点で一致した。一方、EU域内間の人の移動をどのように制限するかについては足並みがそろわなかった。
EUでは7月、各国が「EUデジタルCOVID証明書」と呼ばれる共通証明書をワクチン接種者やPCR検査で陰性の人、コロナに感染して回復した人に発行し、証明書を持つ人が入国時のPCR検査、入国後の一定期間の隔離なしに域内を自由に移動できるようにする制度の運用が正式に開始された。
しかし、オミクロン株の感染拡大を受けて、ポルトガルとアイルランドが12月初め、ワクチン接種を終えた人であっても入国時にPCR検査などでの陰性証明を提示することを義務付けた。14日にはイタリア、15日にはギリシャが同様の措置を発表した。共通証明書を導入した意味がなくなりつつある。
こうした動きについて、首脳会議ではルクセンブルクやラトビアなどが域内の自由な移動の重要性を強調し、異論を唱えた。最終的に意見を集約することはできず、旅行規制について「科学的根拠に基づいた協調」が必要で、「いかなる制限措置も客観的な基準を根拠とし、加盟国間の人の自由を不均衡な形で阻害するべきではない」という議長総括を採択するにとどまった。
欧州委は11月、ワクチン接種証明書の有効期間を9カ月間に限定することを提案した。期限を設けることで、追加接種を促す狙いがある。これに関しては合意に向かっているが、今回の首脳会議では結論が出ず、21日に加盟国が再協議することになった。