欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/1/10

EU情報

12月のユーロ圏インフレ率は5%、エネルギー高騰などで過去最高更新

この記事の要約

EU統計局ユーロスタットが7日に発表したユーロ圏の2021年12月のインフレ率(速報値)は前年同月比5.0%だった。前月の4.9%を上回り、過去最高を更新した。エネルギー価格の上昇、サプライチェーンの混乱が物価を押し上げ […]

EU統計局ユーロスタットが7日に発表したユーロ圏の2021年12月のインフレ率(速報値)は前年同月比5.0%だった。前月の4.9%を上回り、過去最高を更新した。エネルギー価格の上昇、サプライチェーンの混乱が物価を押し上げる状況が続いている。(表参照)

市場では12月のインフレ率が前月を下回るとの見方が多かった。インフレ率が前月を上回るのは6カ月連続。欧州中央銀行(ECB)が目標とする2.0%を大きく超えている。分野別の上げ幅はエネルギーが26.0%、工業製品が2.9%、サービスが2.4%。

原油、天然ガス価格がコロナ禍の影響で20年に低迷した反動で高騰しているエネルギーは前月から1.5ポイント縮小したが、なお高水準で、物価急上昇の最大の要因となっている。サービスは新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大で旅行が減ったことなどで、0.3ポイント縮小した。

一方、インフレ率算出で比重がエネルギーより高い工業製品は、上げ幅が前月の2.4%から拡大した。サプライチェーンの混乱による半導体など生産資材の値上がりが大きく反映された。ECBが金融政策で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ率)は横ばいの2.6%で、高止まりしている。

主要国のインフレ率はドイツが5.7%、フランスが3.4%、イタリアが4.2%、スペインが6.7%。ドイツは縮小し、フランスは横ばいだったが、イタリアとスペインは拡大した。

今後については、ドイツの付加価値税(VAT)減税が20年12月に打ち切られた反動がなくなり、エネルギー価格の安定、サプライチェーン混乱の解消が進むと目されることから、インフレ圧力が弱まる見込みだ。ECBは22年末までに目標の2.0%を下回ると予想している。

ただ、サプライチェーンがいつ正常化するかなど、不透明な要素が多い。12月のインフレ率が予想を上回ったことで、米英など他の主要国の中銀と比べて金融正常化の動きが鈍いECBに対応を促す圧力が強まることが予想される。

それでも、ECBはコロナ禍対応として実施している緊急資産購入プログラムを予定通り2022年3月末に打ち切ることを12月に決めたばかりで、3月までは金融政策の大きな見直しはないとの見方が有力。政策金利引き上げも23年以降になるとみる向きが多い。