欧州委が復興基金の財源確保案発表、排出量取引収入などEU予算に編入

欧州委員会は12月22日、EUが創設したコロナ復興基金の財源確保案を発表した。排出量取引、国境炭素税、多国籍企業への課税の収入の一部をEU予算に組み込んで独自財源とし、復興基金のため調達した資金の返済に充てる。最大で年170億ユーロを確保できると見込んでいる。

コロナ復興基金(正式名称:次世代EU)は7,500億ユーロ規模。欧州委が環境債など債券の発行で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、コロナ禍で経済が大きな打撃を受けた国に補助金と融資の形で配分する。

欧州委は物価の変動を考慮し、基金の規模を上回る8,000億ユーロを26年末までに調達することになっている。調達した資金は2058年まで30年間をかけて償還する。このため、新たな財源が必要だ。

欧州委案で柱となるのは、EUの排出量取引の収入。現行制度では排出枠の入札で得た収益の大半が加盟国の取り分となっているが、25%をEU予算に組み込む。自動車と建物の冷暖房用の燃料を対象とする新たな排出量取引制度を設けることも前提に、26~30年に年平均120億ユーロ程度を確保できる見通しだ。収入の一部は、脱炭素化促進で生じる低所得層の負担を軽減するため創設を提案している「社会気候基金」にも充てる。

国境炭素税は温暖化対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税を課すもの。欧州委が21年7月に提案し、23年から段階的に導入することを目指している。欧州委案では税収の75%を復興基金償還に充てる。財源規模は年平均10億ユーロ。

多国籍企業への課税は、経済協力開発機構(OECD)加盟国を中心とする136カ国・地域が21年10月に合意したもので、巨大IT企業などに課税する。欧州委はEU加盟国が得た税収の15%をEU予算に組み込むことを提案している。年平均25億~40億ユーロを確保できると見込んでいる。

欧州委の独自財源案は加盟国と欧州議会の承認が必要。加盟国の間では排出量取引の収入が減ることに反発する動きが早くも出ており、調整は難航が予想される。

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