●トマト栽培は将来性有望、大手企業も参入
●同国の農業技術力は伸長続く
ポーランドでトマトの栽培にITやデジタル技術を駆使したハイテク温室を利用する事業者が増えている。同国は生産コストが低い上に人口規模が大きく消費量も多いことから、関連事業に乗り出す大企業も登場している。昨今のエネルギー価格高騰の影響は受けているものの今後の見通しは明るく、同国は関連企業の注目を集めている。
欧州連合(EU)で第6位となる3,800万人の大きな国内市場を抱えるポーランドでは、温室栽培のトマトの作付面積は1,400ヘクタール(ha)に上る。人口1人当たりのトマトの消費量は欧州でも最大規模に位置している。
同国の農業生産法人ムラルスキ(Mularski)は特殊な人工光を使いトマトのハウス栽培を行っている。また、物流やガソリンスタンド事業も手掛ける複合企業シトロネックス(Citronex)は味が良いとされる桃色系の品種を多く生産し、小売りスーパーのビエドロンカで販売している。同社はビエドロンカ向けに300haから400haの耕地を確保しているが、そのうち露地栽培は20haのみだ。
外国企業もポーランドのトマト栽培に熱い視線を送る。オランダの種苗会社アクシアで同国事業を担当するレネ氏は、同国の桃色系トマトの品質はとても良いと話す。アクシアは同国で桃色系のカクテルトマトやミニトマトを扱っているほか、最近では桃色系の重さ170グラムの品種を導入した。
■農業が発展する一方、石炭への依存度を下げる必要も
同国の農業関連の技術力は伸長を続けている。アクシアは現在、ハイテク温室向けに事業の重点を置くが、今後自然光による温室栽培への需要が伸びれば、温暖な地域向けにスペインで栽培している種苗をポーランドでも栽培できないかどうか検討する意向だ。
レネ氏はポーランドの国全体と農業が急速に発展しているとの見方を示す。新技術の導入に消極的とされてきた地方でも新しい温室栽培の施設が続々導入されている。同国のトマト栽培の見通しについては、ムラルスキのようなイノベーティブな事業者がカクテルトマトやミニトマト、プラムトマトを選択しているものの、市場は依然限られている。むしろレネ氏が注目するのは様々な色の大玉系の品種で、150グラムから180グラム程度のオレンジ色のトマトや220グラムほどの「クオール・ディ・ブエ(牛の心臓)」などがそれだ。同氏は今後も、栽培トレンドの変化から目が離せないと語る。
ポーランドの事業者も他国の農家と同様エネルギー価格の高騰に苦しめられているが、レネ氏は今後数年の間に大きな変化が訪れると予想する。「ポーランドの農業はエネルギー使用量における石炭への依存度が70%から80%と高いのが大きな課題だ」と話す同氏は、昨年1月に比べ2倍になったエネルギー価格の影響はハウス農業の発達したオランダよりも大きいと指摘する。ポーランドはEUとの合意に基づき、2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を削減するため石炭の利用を減らす必要に迫られており、農業分野にも影響が及ぶ見通しだ。