EUの欧州司法裁判所は16日、「法の支配」の原則に違反した加盟国に対し、EU予算の配分を停止できる規定を適法とする判断を示した。ポーランドとハンガリーは無効化を求めて提訴していたが、司法裁は両国の主張を退けた。今後は欧州委が実際に同規定を発動するかが焦点となる。
法の支配の順守を予算配分の条件とする規定は、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済の再建を目指す総額7,500億ユーロ規模の復興基金の創設と、2021~27年の中期予算計画に関する協議の中で、EU予算の不適切な使用を防止するため20年12月に採択された。同規定は21年1月から適用されているが、ポーランドとハンガリーは同年3月、法的根拠に欠けるなどと主張し、司法裁に提訴した。
欧州裁は判決で、法の支配が確保されていない加盟国に対する予算配分の停止を可能にする制度は「適切な法的根拠に基づいて導入された」と指摘し、両国の訴えを退けた。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は声明で、「EUの政策が正しい軌道に乗っていることが確認された」と判決を歓迎。判決の内容を精査したうえで数週間以内に条件規定を発動する際の手続きなどを明文化し、「条件を満たしていると判断すれば思い切って行動する」と述べた。
ポーランドは司法制度、ハンガリーは汚職や性的マイノリティの権利保護などをめぐってEUと対立している。ポーランドとハンガリーは復興基金を含め、27年までにEUからそれぞれ750億ユーロ、225億ユーロの資金を受けることになっている。ポーランドのモラウィエツキ首相は記者会見で、加盟国の主権を制限するEUの「中央集権化」は極めて危険だと非難。ハンガリーのオルバン首相率いる与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」は、今回の判決は同国に対する「政治的報復」であり、野党を利することになると批判した。ハンガリーでは4月3日に総選挙が予定されており、世論調査では与野党の支持率が拮抗している。