欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/2/28

EU情報

EUがウクライナに武器支援、露SWIFT排除などに続き

この記事の要約

EUは27日、オンライン形式で理事外相会合を開き、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対して領空封鎖などの追加制裁を科す一方、ウクライナ軍への武器供与のため4億5,000万ユーロ(約580億円)のEU資金を投入すること […]

EUは27日、オンライン形式で理事外相会合を開き、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対して領空封鎖などの追加制裁を科す一方、ウクライナ軍への武器供与のため4億5,000万ユーロ(約580億円)のEU資金を投入することで合意した。また、ロシアの大手銀行などを国際的な決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することも正式決定した。

一部のEU加盟国は既にウクライナ軍への武器供与を表明していたが、EUが紛争当事国に武器供与のため資金提供するのは今回が初めて。ウクライナの要請に応じた形で、燃料や防護服などの購入費用としてさらに5,000万ユーロを上乗せする。

ボレル外交安全保障上級代表(外相)は会議後の記者会見で、「ウクライナで全面的な戦争が起きている。ウクライナのためにあらゆる支援策を講じたい」と強調。「戦闘機を提供する用意もある。話は弾薬にとどまらない」と述べ、EUとしてウクライナへの軍事支援を拡大する考えを示した。

一方、ロシアに対する追加制裁として、ロシア企業が所有する航空機や、ロシアに登録されている航空機、さらにロシアの富裕層が所有するプライベートジェットを対象に、EU領空への乗り入れを禁止する。ドイツやフランスをはじめとする主なEU加盟国や英国などは独自に領空封鎖に踏み切っており、今回の決定で欧州諸国が足並みを揃えることになる。

外相会合ではこのほか、ロシア政府系メディアのEU域内での活動を禁止することで合意した。具体的には「ロシア・トゥデイ」と「スプートニク」が対象となる。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は会合に先立ち、制裁措置により「プーチン大統領の戦争を正当化し、EUの分断をあおるためのうそを拡散することが不可能になる」と強調した。

EUはさらに、ベラルーシがロシア軍のウクライナ侵攻を支援しているとして、ルカシェンコ政権に対して追加制裁を科すことで合意した。重要な外貨獲得手段となっているたばこや木材、鉄鋼などのEU域内への輸出禁止が柱となる。

ロシアを国際決済網から排除、ロシア中銀に対する制裁も

欧州委と米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの6カ国は26日、SWIFTからロシアの金融機関を排除する追加の金融制裁を科すことで合意した。既に金融制裁の対象となっていた大手銀行のほか、必要に応じて他の銀行も対象に加える。SWIFTから排除されると事実上、ロシア以外のすべての国との送金ができなくなる。

SWIFTからの排除はロシアが天然ガスや石油の輸出で得た外貨の送金を遮断し、ロシア経済に打撃を与えるのが狙い。ウクライナが欧米に実施を求めていたが、ロシアが制裁の報復としてエネルギー資源の供給を絞る可能性があるため、欧州で慎重論が根強かった。

欧州では英国やバルト三国などがSWIFTからの排除を求める一方、ドイツやイタリア、ハンガリーが難色を示していた。しかし、26日にドイツのベアボック外相とハーベック経済・気候保護相がツイッターに「狙いを絞った機能的な制限が必要だ」と投稿。これをきっかけに欧州側で意見がまとまり、欧米の合意につながった。

また、欧州委と6カ国は同日、ロシア中央銀行の金融取引を大幅に制限することで合意した。SWIFTからのロシア排除を効果的に実施するため、中銀が外貨準備に乗り出すのを阻止して通貨ルーブルの下落を下支えできないようにし、ロシアの金融市場に一段の波乱を起こしてプーチン政権に揺さぶりをかけるのが狙いだ。

対ロ制裁、段階的に強化

EUはこれまでロシアに対する制裁を段階的に強化してきた。プーチン大統領が21日、ウクライナ東部でロシアへの編入を求めるウクライナ東部の分離独立派が実効支配する「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」を国家として承認する大統領令に署名したことを受け、EUは22日に臨時外相会合を開いて対応策を協議。第1弾の制裁として、ショイグ国防相など国家承認にかかわった27の個人・団体と351人の下院議員を対象に、EU域内の資産凍結やEUへの渡航禁止などの制裁を科すことで合意。24日の臨時首脳会議ではロシアの大手銀行や国有軍事企業などによる金融市場へのアクセスを大幅に制限するほか、航空機および関連製品の輸出禁止や、半導体や最先端ソフトの輸出規制などの追加制裁で合意した。

さらにEUは25日、英国や米国と足並みを揃え、プーチン大統領とラブロフ外相に制裁を科すと発表。同日の外相理事会ではEU域内にある両氏の資産を凍結するほか、ロシアの外交官を対象にビザの取得要件を厳格化したり、製油所の更新に必要な部品などの輸出を規制する措置を決めた。EUによる国家元首への制裁としては、シリアのアサド大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領の例がある。