EUが中国をWTO提訴、特許巡る訴訟ルールを問題視

欧州委員会は18日、EU企業が特許権を行使するため中国国外で訴訟を起こすことを中国が不当に制限しているとして、同国を世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。スマートフォンなどに使用される無線通信技術の標準規格に準拠した製品を製造する上で不可欠な標準必須特許(SEP)を巡り、中国政府は特許権者が国外の裁判所で権利を行使することを事実上禁止しており、WTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」に抵触すると主張している。

欧州委が問題視しているのは、中国最高人民法院が2020年8月に出した外国訴訟差止命令(Anti-Suit Injunction)。SEPのライセンスに関する紛争で、中国メーカーに対する訴訟を国外で起こしてはならないとする内容で、違反した場合は1日につき最高100万元(約1,800万円)の罰金が科される。欧州委によると、同ルールが導入されて以来、中国の裁判所は外国企業に対して4件の訴訟禁止命令を出している。

欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)は、外国訴訟差止命令により中国メーカーは正当な対価を支払うことなくEU企業の保有する特許技術を利用しているのに対し、EU企業は自社の技術が違法に使用されても正当な救済措置を受けることができないと非難。EUのハイテク産業を保護するため、こうした不当な競争条件を是正しなければならいと訴えた。

EUと中国は今後、WTOの紛争解決手続きに基づき当事者間の協議に入る。60日以内に解決できない場合、欧州委はWTOに紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請できる。

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