鉄鋼メーカーが生産停止、電力コスト大幅増でペイせず

鉄鋼製造の独レッヒシュタールヴェルケ(LSW)が本社所在地マイチンゲンにある工場の操業を停止した。電力コストの大幅上昇を受けた措置。広報担当者は10日、「生産は経済的に見合わない」と述べた。ロイター通信が報じた。

同工場では電炉を用いて製品を製造している。生産規模は年100万トン強。30万人都市に匹敵する量の電力を消費している。

エネルギーコストの上昇は鉄鋼業界を直撃している。独業界団体シュタールによると、ロシアのウクライナ侵攻前の時点で電力とガスの価格は2021年初頭の約3倍に上昇していた。広報担当者は「戦争勃発でコストの上昇が一段と加速する」と懸念を表明した。

電炉はコークスを用いる高炉に比べ電力消費量が大幅に多い。高炉が生産過程で発生するガスで発電し必要な電力の大部分を賄えるのに対し、電炉は鉄スクラップをもっぱら電力の熱で溶かし製鉄するためだ。

鉄鋼各社は現在、電力料金をにらみながら電炉を操業している。独鉄鋼2位ザルツギターの広報担当者は、電力料金動向を常に注視し、料金が高いときは生産シフトを削減して電炉の操業を見合わせていると述べた。世界最大手のアルセロール・ミタルもドイツ、ルクセンブルク、ポーランド、ルーマニア、スペインで同様の措置を実施しコスト管理を図っている。

独最大手ティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパは高炉を多く持つため、競合に比べ痛手が小さい。それでもコストは膨らんでおり、ベルンハルト・オスベルク社長は2月中旬、「過去6カ月間だけでガスと電力の支出の増加幅は1億ユーロのケタ台に上る」と述べた。

上部へスクロール