加盟国と欧州議会がデジタル市場法修正案で合意、巨大IT企業の規制強化

EU加盟国と欧州議会は24日、巨大IT企業に対する新たな規制案「デジタル市場法(DMA)」の修正案で合意した。デジタル市場で支配的な立場にあるプラットフォーマーの影響力を抑え、公正な競争環境を確保するのが狙い。閣僚理事会と欧州議会の承認を経て、2023年の新ルール導入が見込まれる。

新規制は巨大プラットフォーム企業を「ゲートキーパー(門番)」と位置付け、他社のサービスを排除したり、自社サイトで自社の製品やサービスを優遇するなどの行為を禁止する。EU域内で検索エンジンや交流サイト(SNS)、動画共有サイト、クラウドサービスなどの「コア・プラットフォーム」サービスを展開する事業者のうち、時価総額が750億ユーロ(約10兆円)以上か域内の年間売上高が75億ユーロを超え、域内のサービス利用者が月間4,500万人以上で、法人ユーザーが年間1万社を超える事業者が規制の対象となる。

アルファベット傘下のグーグルやメタ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム、アップルなどの米IT大手のほか、オランダに本社を置く旅行予約サイトのブッキング・ドットコムや中国の電子商取引大手アリババなども対象になるとみられる。ゲートキーパーに認定された企業は自社の製品やサービスを検索結果で上位に表示したり、自社サイトを利用する競合他社のデータを使って自社サービスが有利になるようにするなど、反競争的な行為が禁止される。スマートフォンなどに特定のアプリを予めインストールすることも禁止される。

一方、プラットフォーマーによる寡占化が進むのを防ぐため、ゲートキーパーはいかなる買収計画も欧州委に報告しなければならず、欧州委は潜在的な競争の脅威をつぶす目的で新興企業を買収する「キラー買収」を阻止することができる。

違反した企業は世界における年間売上高の最大10%の罰金が科される可能性があり、違反行為を繰り返せば最大20%に引き上げられる。

欧州委員会のベステアー上級副委員長は声明で、「公平な競争条件は民主主義の一部だ。今回の合意により、公平で開かれた、競争可能なデジタル市場の実現に向けて大きく前進する」と強調した。

法案について、グーグルは声明で「消費者の選択肢が増えることや、相互運用性に関する野心的な目標設定の多くを支持するが、一部のルールが技術革新を阻害し、人々の選択肢を減らす可能性があると懸念している」とコメント。一方、アップルはユーザーのプライバシーやセキュリティに「不必要な脆弱性」をもたらす項目が法案に含まれていると指摘した。

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