独スタートアップ企業テイオンは3月29日、従来のリチウムイオン電池に比べエネルギー密度が3倍の電池を開発していると発表した。材料と製造コストは大幅に低く、商業化に成功すれば電気自動車(BEV)などの普及に弾みがつきそうだ。ギガファクトリーの建設を視野に入れている。
リチウムイオン電池では正極材にニッケル、コバルトが使用されている。両材料は資源の量が少なく、需要の拡大を受けて価格が高騰。鉱山の周辺地域では環境汚染や健康被害が起きている。
テイオンの電池では正極材にリチウムと硫黄、カーボンナノチューブを使用する。硫黄はふんだん存在する物質であるため需要が増えても価格が高騰するリスクが低い。採掘で有害な物質が発生することもない。同社によると、正極材の調達コストは最新のリチウムイオン電池に比べ99%少ない。また、原材料から完成品に至るセル生産工程で必要なエネルギーは90%少ない。
テイオンは電池サンプルを年内にも開始する。まずはロケット用ポンプ向けに供給。その後、電動航空機やエアタクシー、ドローン、携帯電話、ラップトップ向けなどに対象を広げていき、2024年にはBEV向けのサンプル出荷も開始する。BEV向けの電池は航続距離で1,000キロ超、重電時間で10分未満を実現する意向だ。
同社は現在、ベルリン市内の3拠点でセルの設計、試作、試験を行っている。量産に向けてギガファクトリーを建設する意向。設置場所は欧州、アジア、米国を想定している。
テイオンにはハイテク専門投資会社チーム・グローバルの共同設立者であるウーカシュ・ガドフスキー氏が出資している。同氏は電池需要が急増する一方で、材料コストと持続可能な調達が不安定となっている現在、テイオンの電池が持つ意義は大きいと指摘。「本格的に生産されれば、地球上のあらゆるモビリティ機器の電池を置き換える可能性を秘めている」と強調した。